かんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を展開する、現場改善ラボ編集部です。
フォークリフトによる労働災害や事故は依然として多く、あらゆる現場で安全対策が求められています。そのうちの1つに「安全に作業を進行するための操作やルール」があります。
そこで本記事では、安全性を高めるフォークリフト作業を解説します。解説内容はすべて、フォークリフト運転技能講習修了証を所持する現役物流スタッフによって執筆されているため、実践的な安全操作マニュアルのヒントが得られるはずです。
なお、フォークリフトの基本操作についてまとめられたマニュアルは以下の記事からご覧いただけます。基礎的な操作方法もおさらいしたい方は、あわせて参考にしてみてください。
関連記事:フォークリフト基本操作マニュアル!作業手順書の例も紹介
目次
フォークリフト安全作業マニュアルの基礎となる公式ガイドラインの紹介
物流の現場において、いまや必要不可欠となっているフォークリフトですが、厚生労働省の調査では、2019年~2023年の5年間で毎年、平均25.6人が「フォークリフトが起因する労働災害事故で命を落としている」という報告が上がっています。
▼フォークリフトによる死亡災害件数の推移▼
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 5年間の平均 | |
---|---|---|---|---|---|---|
フォークリフトによる死亡災害(件) | 20 | 31 | 21 | 34 | 22 | 25.6 |
物流企業の作業員として15年以上の経験がある筆者ですが、実際に「足を踏まれた」や「ぶつかった」などの人身事故を何度も目撃してきました。
そういった事故を防止するために、社内マニュアルを整備し安全作業を徹底することが非常に重要です。そこでこの項では、フォークリフト安全作業に関する社内マニュアル作りの基礎となる公式資料を紹介します。
以下の資料は、厚生労働省や労働局等の公的機関が出典先となっている、フォークリフト安全作業のためのガイドライン一覧です。
ガイドラインとマニュアル
資料名 | 概要 | 出典元 |
---|---|---|
陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン | ・荷役作業における安全対策の具体的な指針を示したガイドライン ・フォークリフト運転者の遵守事項や安全対策について詳しく記載 | 厚生労働省 |
フォークリフトの安全な作業のために | ・フォークリフトの運転資格確認や定期点検 ・作業計画作成など安全作業の具体的な手順を解説 | 愛知労働局 |
荷役作業時における墜落・転落災害防止のための安全マニュアル | ・フォークリフトの用途外使用禁止について解説 ・KY(危険予知)活動の方法も解説 | 厚生労働省 |
フォークリフト災害を防止しよう! | ・大阪府内のフォークリフト災害事例と防止対策について解説 ・特に管理面と人的・物的対策について詳しく解説 | 大阪労働局 |
フォークリフト運転技能講習補助教材 | ・フォークリフト運転に関する基本知識や技能を解説した補助テキスト(14か国語対応) | 厚生労働省 |
セミナー・安全教育資料
資料名 | 概要 | 出典元 |
---|---|---|
フォークリフト安全対策説明会「労働災害発生状況及びフォークリフトに関する法規制」 | ・全国、滋賀県の労働災害発生状況の調査資料を掲載 ・フォークリフトの法規制について詳しく解説 | 滋賀労働局 |
まんがでわかるフォークリフトの安全衛生 | ・フォークリフトの安全作業について漫画で解説 | 厚生労働省 |
フォークリフトに起因する労働災害の発生状況 | ・フォークリフトに起因する死亡労働災害の発生状況について多数のデータを紹介 | 一般社団法人日本産業車両協会(JIVA) |
フォークリフト荷役技能検定 | ・フォークリフト荷役技能検定について紹介 ・その中にフォークリフト作業の参考動画あり | 陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防) |
これらは、国や公共機関など信頼できる情報元からの資料であり、マニュアルやガイドライン作成の参考として最適です。とはいえ情報量が多く、まとめるのが大変なので、これらの資料からわかる「フォークリフトの安全作業マニュアルを規定するうえで取り入れるべき要素」について、ここから解説します。
フォークリフトの安全作業マニュアルに盛り込むべき必須項目
「フォークリフトで安全に作業する」という観点で社内マニュアルを作成する際、実際にどういった項目を設置すれば良いのか迷ってしまう方も多いでしょう。
この項では、5年以上作業現場の安全衛生担当者として、職場の安全を守る活動をしていた筆者が、フォークリフトの安全作業マニュアルに盛り込むべき内容を解説します。
具体的には以下の7つをマニュアル化し、作業員に周知徹底させるのがおすすめです。
- 作業開始前の点検(日常点検・始業前点検)
- 安全作業を徹底するうえでの基本的な運転操作ルール
- 作業環境に応じた禁止事項・注意事項
- 作業計画の作成と周知
- 緊急時の対応手順
- ヒヤリハット報告と危険予知(KY)活動
- 定期的な安全教育と効果測定
※なお、本記事はフォークリフトの「安全作業」に関するマニュアル作成について解説していますが、「基本操作や作業方法」に関するマニュアル作成方法については、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:フォークリフト基本操作マニュアル!作業手順書の例も紹介
1. 作業開始前の点検(日常点検・始業前点検)
「労働安全衛生規則第151条の25」で以下のように定められているように、作業開始前の点検は、安全に作業する上での必須項目です。
事業者は、フオークリフトを用いて作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、次の事項について点検を行わなければならない。
一 制動装置及び操縦装置の機能
二 荷役装置及び油圧装置の機能
三 車輪の異常の有無
四 前照灯、後照灯、方向指示器及び警報装置の機能
始業前に毎日点検することで、整備不良による事故を未然に防ぐことができます。
例えば、筆者は始業前点検で「バックレストのボルトの緩み」に気付き、締めなおしてから作業に取り掛かった経験があります。もし始業前点検をおこなっていなければ、バックレストが落下し大事故につながっていたかもしれません。
具体的なチェック項目例として、以下が挙げられます。
点検項目 | |
---|---|
安全確認 | 0 点検前の安全準備 |
外回りの点検 | 1 水漏れ、油漏れ |
2 ブレーキフルード | |
3 エンジンオイル | |
4 タイヤ、リム | |
5 ハブナットの点検 | |
6 ライセンスプレート | |
7 冷却水 | |
8 作動油 | |
9 フォーク・バックレスト | |
車上での点検 | 1 バックミラー |
2 パーキングブレーキ | |
3 ブレーキペダル | |
4 インチングペダル (トルコン車)/クラッチペダル (クラッチ車) | |
5 各計器の点検 | |
6 エンジン | |
7 ランプ | |
8 ホーンボタン | |
9 ステアリングホイール | |
10 荷役装置 |
重要なのは、上記のような項目を羅列した点検表を作成し、作業前のチェックを標準化することです。チェック用紙は保管し、車両に不備があれば担当者へ即座に報告し、必要に応じて整備するようマニュアル化しておきましょう。
フォークリフトの点検作業は煩雑なので、動画や映像によるマニュアルを整備する手段も検討の余地があります。たとえば物流企業「株式会社近鉄コスモス」は、始業前点検を動画マニュアル化し、効率的な現場教育を推進しています。
▼点検手順を教育する動画マニュアルの例▼
※「tebiki」で作成されています
物流現場ではこのように、動画マニュアルを活用した「安全教育の取組」が多く導入されています。動画による安全教育の具体例や動画イメージについてより理解を深めたい方は、以下の資料「~製造業・物流業の事例から学ぶ~動画マニュアルを使った安全教育の取り組みと成果(pdf)」も参考になるでしょう。リンクをクリックすると、pdf資料ダウンロードフォームに遷移します。
>>>「~製造業・物流業の事例から学ぶ~動画マニュアルを使った安全教育の取り組みと成果(pdf)」を見てみる
2. 安全作業を徹底するうえでの基本的な運転操作ルール
安全な運転操作は、フォークリフト作業の基本です。マニュアルには、誰もが守るべき基本的な操作手順を明確に規定する必要があります。
以下に紹介する基本的なルールをマニュアルに明記し、全ての運転者が遵守するように徹底することが、事故防止につながります。
走行時の注意点
- 構内制限速度の遵守
- 安全な通路幅の確保と安全な走行経路の選択
- 進行方向、左右、後方の安全確認の徹底
- 見通しの悪い場所での一時停止と警笛(クラクション)の使用
- 明確な合図と呼称の実施(指差し呼称など)
荷役作業時の注意点
- 最大積載荷重の遵守(過積載の禁止)
- 荷崩れ防止のための適切な積み付け(偏荷重にならないように注意)
- 安定した荷物の持ち上げ方、降ろし方(マストの傾き、フォークの差し込み深さなど)
- 荷物を高く上げたまま走行しない
駐車時の措置
- フォークを最下位まで降下させる
- 駐車ブレーキを確実にかける
- エンジンを停止し、キーを抜く(離席時)
- 社内ルールに基づいて輪留めを使用
3. 作業環境に応じた禁止事項・注意事項
フォークリフトの作業環境はさまざまであり、特定の場所や状況下では特有の危険が潜んでいます。マニュアルには、作業環境に応じた禁止事項や注意事項を具体的に明記することが重要です。
例えば、以下のような項目が挙げられます。
傾斜地での操作 | 荷物を積んでの昇降は原則禁止。やむを得ず走行する場合は荷物を山側に向けるなど、転倒防止策を規定する |
雨天・悪天候時 | 視界不良やスリップの危険があるため、最高速度を5kmに落とすなど |
視界不良箇所 | 見通しの悪い通路や交差点では、一時停止、警笛、誘導員の配置などのルールを定める |
立入禁止区域の設定 | フォークリフトの作業範囲と歩行者の通路を明確に区分し、作業エリアへの安易な立ち入りを禁止する |
これらに加え、それぞれの作業場に独自の危険ポイントを盛り込むことで、あなたの現場に適したマニュアルが作成できます。
4. 作業計画の作成と周知
「労働安全衛生規則(作業計画)」には、以下のように明記されています。
第151条の3
事業者は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業 (不整地運搬車又は貨物自動車を用いて行う道路上の走行の作業を除く。以下第151条の7までにおいて同じ。)を行うときは、あらかじめ、当該作業に係る場所の広さ及び地形、当該車両系荷役運搬機械等の種類及び能力、荷の種類及び形状等に適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。
作業計画書は、作成して終わりではなく、始業前のKY(危険予知)活動とともに作業従事者全員に周知することが重要です。
具体的に、以下のような項目を盛り込みましょう。
基本情報
- 作成年月日
- 計画作成者名
- 作業名
作業内容詳細
- 作業の具体的内容(荷の運搬工程等)
- 実施期間(期限付きまたは無期限)
- 作業人数
- 作業時間
荷の情報
- 品名、荷姿、形状、個数、1個の重量
- 荷の状況(はい積、バラ積、その他)
人員配置
- 作業指揮者の氏名、職制上の地位、当該作業の経験年数、フォークリフトの知識
- フォークリフト運転者の氏名、技能講習修了番号、資格取得年月日、当該作業の経験年数
使用機器情報
- フォークリフトの種類・能力・点検状況
- 車両番号、最大荷重
- 作業開始前点検状況、月例検査実施日、特定自主検査実施日
- パレット等の能力・点検状況
作業環境
- 作業場所の広さ、路面状況、傾斜、幅員、危険箇所、障害物
- 制限速度と掲示状況
作業図
- フォークリフトの運行経路
- 周辺労働者の立入禁止箇所
- フォークリフトの走行禁止箇所
- 各種標識・一旦停止・作業指揮者及び誘導者の配置場所
安全対策
- 作業開始前・作業中の留意事項(保護具着用、シートベルト着用、資格証携帯、点検実施等)
なお、鳥取労働局のWebサイトから「フォークリフト作業計画書の参考様式」をダウンロードできます。
5. 緊急時の対応手順
万が一、フォークリフトによる事故が発生した場合や、作業中に故障が発生した場合に、迅速かつ適切な対応ができるよう、緊急時の対応手順をマニュアルで明確に定めておくことが必要です。
マニュアルに盛り込むべき項目としては、以下のようなものが考えられます。
事故発生時の初期対応 | 負傷者の救護、二次災害の防止措置(エンジン停止、サイドブレーキの確認など) |
報告・連絡体制 | 誰に、いつ、どのように報告するか(報告ルート、緊急連絡先リスト) |
応急処置 | 負傷者に対する応急手当の方法(可能な範囲で) |
避難 | 火災発生時などの避難経路、避難方法 |
これらの対応フローを事前に定め、関係者全員が理解しておくことで、パニックに陥ることなく、落ち着いて行動できるようになります。
6. ヒヤリハット報告とKY(危険予知)活動
ヒヤリハットとは、「事故には至らなかったものの、ヒヤリとした、ハッとした危険な出来事」のことです。
このヒヤリハット情報を収集し、分析・活用することは、事故を未然に防ぐ上で非常に有効な手段と言えます。
また、「KY(危険予知)活動」を日々の作業に組み込むことも有効です。KY(危険予知)活動とは、「作業に潜む危険要因を事前に予測し、対策を立てる活動」を指します。例えばKYT(危険予知訓練)が挙げられます。
マニュアルには、KY活動の具体的な実施方法(例:作業前の短時間ミーティングで毎日実施など)や、KY活動を形骸化させないためのルール(実施記録の作成など)を定めることが望ましいでしょう。
筆者が以前勤務していた現場では、安全衛生担当者が毎日朝礼時に、その日の作業の中に潜む危険因子を発表し、作業員が事故防止策を考え発表する時間を設けていました。
フォークリフトのヒヤリハット事例や対策については、以下の記事で詳細に解説しているので、あわせてご覧ください。
関連記事:フォークリフトのヒヤリハット事例集と対策まとめ!危険予知の事例もあわせて解説
7. 定期的な安全教育と効果測定
どんなに優れたマニュアルを作成しても、それが現場の作業者に浸透し、遵守されなければ意味がありません。
マニュアルを形骸化させないためには、定期的な安全教育の実施が不可欠です。マニュアルには、定期的な安全教育の実施計画を定めることを明記します。
教育内容としては、以下のようなものが考えられます。
- 安全作業マニュアルの読み合わせ、内容の再確認
- 事故事例やヒヤリハット事例の共有、原因と対策の検討
- 関連法規の改正情報の共有
- 実技訓練(正しい運転操作、危険回避行動など)
さらに、安全教育を実施した記録を残すとともに、教育の効果を測定するための方法(例:理解度確認テストの実施、作業観察による遵守状況のチェックなど)もマニュアルで規定しておくことが重要です。
効果測定の結果を踏まえ、教育内容やマニュアル自体の改善につなげていくことで、継続的な安全レベルの向上が期待できます。
フォークリフトの安全対策や安全意識を高める取り組み
フォークリフトによる事故を未然に防ぐためには、具体的な安全対策の実施と、作業者一人ひとりの安全意識を高める取り組みが不可欠です。
労働災害の多くは、運転操作の誤りや安全確認不足、車両の不備、不安全な作業方法などが原因で発生しています。労働安全衛生規則等に基づき、以下のような安全対策を確実に実施し、安全な作業環境を維持することが重要です。
- 動画マニュアルによる安全対策
- 安全作業の標準化・安全教育体制の整備
- フォークリフト4原則の遵守
- 5Sの徹底
- KY(危険予知)活動やヒヤリハット報告の実施
- フォークリフトと人員の作業動線を整理
- フォークリフトの定期メンテナンスや保全業務の組み込み
- ドライブレコーダーの搭載
それぞれの安全対策の詳細は、以下の記事でご覧いただけます。マニュアルだけでなく、安全作業のための具体的な取り組みについても対策を練りたい方は参考にしてみてください。
関連記事:フォークリフトの安全対策8例!事故を防止した改善事例や安全意識を高める方法も解説
さらに、これらの対策を形骸化させず現場に浸透させるためには、定期的な安全教育が欠かせません。
継続的な教育を通じて、運転者の知識・技能の向上を図るとともに、常に高い安全意識を持って作業に取り組む姿勢を常態化させることが重要です。
動画や映像を活用したフォークリフト安全作業マニュアルの例
安全作業マニュアルを動画で作成することは、以下のようなメリットがあります。
- 紙マニュアルでは理解しづらい操作方法や作業手順が一目でわかる
- OJTによる教育内容のバラつきを防止できる
- OJTでかかる人的コストを削減できる
- 多言語対応することで難しい外国人教育を簡素化できる
例えば、物流業の株式会社近鉄コスモスは、フォークリフトの操作方法や禁止行為に関するマニュアルを映像化し、従業員の安全意識向上に努めています。
▼安全教育を映像で実施する例▼
※「tebiki」で作成
物流業における安全教育の実施方法や、他社の取り組み事例を知りたい方は、以下の資料が参考になります。動画を活用した安全対策についても解説しているので、ご覧ください。
>>>「~製造業・物流業の事例から学ぶ~動画マニュアルを使った安全教育の取り組みと成果」を見てみる
これらの動画は、物流現場に特化した動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」によって作られており、現場作業員がスマホ1つで撮影をしています。
動画マニュアルのイメージをさらに膨らませたい場合は、動画マニュアルのサンプル映像が見れる以下の資料「実際に業務で使われている動画マニュアルのサンプル集(pdf)」もご覧ください。
>>>「実際に業務で使われている動画マニュアルのサンプル集」を見てみる
まとめ
フォークリフトによる労働災害を防ぐには、安全作業マニュアルの整備と運用が不可欠です。本記事では、公的ガイドラインを参考に、マニュアルへ盛り込むべき必須項目として、以下6点が重要であると解説しました。
- 法令遵守(始業前点検・作業計画)
- 基本操作ルール
- 環境別注意点
- 緊急時対応
- KY活動・ヒヤリハット活用
- 定期教育
これらを網羅し、現場の実情に合わせて具体化することが重要です。
特に、安全に関するルールや手順、そして潜在的な危険性を全作業員に確実に理解・実践してもらうためには、動きやニュアンスも正確に伝わる「動画マニュアル」の活用が非常に効果的です。物流業に特化した動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」なら、過度なOJT教育に頼ることなく、従業員の安全教育を効率的に推進することが可能です。
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