現場改善ラボ 記事一覧 お役立ち情報 製造業の歩留まり改善「6つの秘訣」と直行率や良品率も向上するムダの排除法とは?

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歩留まり(ぶどまり)とは、生産量に対する完成品の割合を示す言葉です。主に製造現場で、製造原価の抑制や生産性向上のために指標として用いられます。歩留まりを計算することで原材料といった製造コストのムダを把握できます。その原因を洗い出し、改善策を講じることで効率的な生産が期待できます。

本記事では歩留まりの意味や歩留まり率の計算方法、製造業で歩留まりが悪化する要因や改善手法について解説します

現場改善ラボでは、製造現場で歩留まりが発生する原因を4Mの視点から紐解き、改善につなげる方法を専門家が解説する動画を以下よりご覧いただけます。ぜひこの機会にご活用いただき、歩留まり向上を実現しましょう。


4Mの視点から実践する歩留まり改善 (2)

製造業における「歩留まり」とは?重要性や計算方法

歩留まりの原因分析や改善に取り組む前に、その定義と重要性について把握しておきましょう。

言葉は知っていても、その本質的な意味や関連指標との違いを曖昧に理解していると、改善の方向性を見誤る可能性があります。

歩留まり・歩留まり率の正しい定義と計算方法

製造業における「歩留まり(ぶどまり)」とは、投入した原材料の総量(または総数)に対して、最終的に得られた良品の量(または数)の割合を示す指標です。「Yield(イールド)」と英語で表現されることもあります。

この歩留まりを百分率で示したものが「歩留まり率」であり、以下の計算式で求められます。前者は数量ベース、後者は重量ベースです。

  • 歩留まり率 (%) = (良品の数量 ÷ 投入した原材料の数量) × 100

例えば、100kgの材料を投入し、最終的に80kgの良品が得られた場合、歩留まり率は80%となります。この数値が高いほど、原材料を効率的に製品化できている、つまり生産性が高い状態を示します。

混同しやすい関連指標との違いを整理

歩留まり率と似た言葉に、「良品率」「不良率」「直行率」「仕損率」などがあります。これらは歩留まり率と同様、品質や生産性を評価するための指標です。

こうした関連指標との違いを正しく理解し、歩留まり率と合わせて多角的に状況を把握することが、品質や生産性向上には不可欠です。そこでここでは、それぞれの定義と歩留まり率との違いを詳しく解説します。

良品率との違い

良品率とは、一定期間に生産された製品(完成品)の総数に対して、そのうち良品であったものの割合を示す指標です。検査の結果、不良と判定されたものも含めた「生産数全体」を母数とする点がポイントです。

  • 計算式:良品率 (%) = (良品数 ÷ 生産数) × 100

歩留まり率が「投入した原材料がどれだけ良品になったか」という、原材料の有効活用度合いに焦点を当てた指標であるのに対し、良品率は「生産プロセスを経て出来上がった製品のうち、どれだけが市場に出せる品質基準を満たしていたか」という、生産結果の品質レベルを示す指標です。

例えば、材料のロスは多い(歩留まり率は低い)ものの、一度加工が始まれば高い精度で良品が作られる(良品率は高い)というケースや、逆に、材料ロスは少ない(歩留まり率は比較的良い)が、加工中のミスが多く不良品がたくさん出てしまう(良品率は低い)というようなケースがあり得ます。

不良率

不良率とは、一般的に生産された製品(完成品)の総数に対して、不良品であったものの割合を示す指標です。

  • 計算式:不良率 (%) = (不良品数 ÷ 生産数) × 100

不良率が高いほど、製造プロセスにおいて何らかの品質問題を抱えており、改善が必要であることを意味します。

例えば、材料を無駄なく使って歩留まり率を高めようとしても、結果として不良品が増えて不良率が上がってしまっては意味がありません。不良率は、顧客に迷惑をかけないため、そして無駄なコストを発生させないための基本的な管理指標と言えます。

関連記事:不良率とは?計算法やPPMの目安・原因分析と改善事例

直行率

直行率とは、生産された完成品の総数のうち、最初の工程から最終工程まで一度も手直しや再加工なく、一発で良品として完成したものの割合を示す指標です。

  • 計算式:直行率 (%) = (一発合格した良品数 ÷ 生産数) × 100

直行率が高いとは、すなわち製造プロセスが安定しており、手戻りや手直しにかかるムダな工数、時間、コストが少ないことを意味します。良品率が高いように見えても、その過程で多くの手直しや選別作業が発生していれば、直行率は低くなります。

歩留まり率や良品率が最終的な「結果としての良品」に着目するのに対し、直行率は「プロセスの健全性や効率性」をより深く示す指標と言えます。

直行率が改善されると、生産リードタイムの短縮、生産コストの削減、作業者の負担軽減などにつながり、結果として歩留まり全体の向上にも寄与します。

仕損率(しそんりつ)

仕損率とは、投入した原材料に対して、最終的に良品にならなかったものの割合を示す指標です。歩留まり率の裏側の概念と捉えると、イメージしやすいかもしれません。投入した資源がどれだけ製品価値に結びつかずに無駄になってしまったかを示しています。

  • 計算式:仕損率 (%) = 100% – 歩留まり率 (%)

例えば、歩留まり率が85%であれば、仕損率は15%となり、投入した原材料の15%が不良品や材料ロスなど、何らかの形で良品にならなかったことを意味します。歩留まり率と合わせて見ることで、投入資源のロス全体の大きさを把握するのに役立ちます。

歩留まり率の低下が与える現場や経営への影響

歩留まりは、単なる生産現場の1指標に留まりません。現場や企業全体に影響を与える大切な指標です。

コスト面(7つのムダ)への影響

歩留まりの低下が具体的にどのようなコスト増に繋がるのか、トヨタ生産方式で体系化された「7つのムダ」の視点から見ていきましょう。この視点を持つことで、問題の本質を的確に捉え、より明確な改善指針が見えてくるようになります。

歩留まり低下によるロス(ムダ)は以下のようなものが挙げられます。

ムダ詳細
不良をつくるムダ歩留まり低下によって最も直接的に発生するムダ。製品として最終的な価値を生まなかった不良品そのもの。投入された原材料費が無駄になるだけでなく、その不良品を生み出すまでにかかった全ての資源が損失となる。
加工のムダ不良品に対して行われた加工、あるいは不良品を良品にしようとする手直し作業。本来不要なムダ。これには機械の稼働エネルギー、工具の摩耗、オペレーターの工数が含まれる。良品を1回で製造できれば加工のムダはすべて削減される。
動作のムダ不良品を選別する動作、検査や測定の動作、不良品に関する記録や報告の動作、手直しのための工具や部品を探す動作など。これらの細かな動作の積み重ねが、作業者の疲労を増大させ、生産リードタイムを長期化させる要因となる。
運搬のムダ不良品を検査場所へ運ぶ、不良品置き場へ運ぶ、あるいは手直しの工程へ運ぶ、手直しが完了した製品を再び正規のラインに戻すといったムダ。運搬は、時間と労力といったコストを要するが、製品の価値は高めない。
手待ちのムダ不良品発生による、ラインの停止や後工程での作業者の「手待ち」の発生。例えば、前工程で不良が多発し部品供給が滞れば、後工程の作業者は手待ち状態になる。
在庫のムダ不良品そのものの一時的な在庫が発生するだけでなく、不良品発生を見越した在庫スペースの確保もムダに含まれる。結果的に管理工数やスペースの圧迫にもつながる。
作りすぎのムダ不良品そのものの生産だけでなく、不良品を見越して、生産計画よりも作りすぎることもムダに含まれる。また、市場や顧客に求められていない製品を生産している点からも作りすぎ(ムダ)と言える。

歩留まり低下によるコストを「7つのムダ」視点で見ると、細かい場面で多くのコストが発生していることが分かると思います。7つのムダに限らず、トヨタ生産方式(TPS)は現場改善を進めるうえで重要なヒントが眠っています。

元トヨタの専門家が登壇しているセミナー動画「トヨタ生産方式と現場改善~産業の垣根を超えた改善の着眼点~」では、トヨタ生産方式を通じた現場改善の知見や実践方法について解説されているので、お時間がある方はあわせてご視聴ください(下の画像をクリック)。


トヨタ生産方式と現場改善~産業の垣根を超えた改善の着眼点~ (1)

品質面への影響

歩留まりが低下しているのは、製造プロセスや製品そのものに何らかの品質問題を抱えている可能性があります。すなわち、歩留まりの低下は品質低下と同義です。

そうすると、以下のような悪影響が及びます。

  • 市場クレームや製品リコールのリスク増大
  • 顧客からの信頼失墜
  • 企業ブランドイメージの毀損

歩留まり低下は単なる1指標ではなく、こうした大きな悪影響に発展する恐れがあり、これらの観点からも歩留まり改善の重要性が分かります。

関連記事:【改善事例あり】製造業における品質不良の原因と8つの対策

生産性面への影響

歩留まりが悪化すれば、材料の無駄が発生し、結果として生産活動全体の効率を大きく低下させます。例えば以下のような悪影響が生じます。

  • 生産計画の遅延や納期のずれ込み
  • 製品完成までのリードタイム長期化
  • 生産ライン全体の稼働率低下

つまり、歩留まり率を定期的にウォッチし、改善を図ることは、製造プロセスのボトルネック解消や生産活動全体の改善に直結するのです。

関連記事:製造現場の生産性が67%向上した事例や改善方法【指標や計算式も解説】

製造業の歩留まりが悪化する主な原因と分析方法

ここからは、歩留まり低下のよくある原因を紹介します。自社に当てはまるものがないかどうか、チェックしてみてください。

歩留まり悪化の2大要因は「不良品の発生」と「材料ロス」

歩留まり率を直接的に低下させる要因は、大きく以下の2つに分類できます。

1つは「不良品の発生」です。これは、投入した材料から製品を加工する過程で何らかの欠陥が生じ、最終的に良品としてカウントできない製品が増えてしまっているケースを指します。

もう1つは「材料ロス」です。これは、製品として完成する以前の段階で、材料そのものが無駄になってしまうケースを指します。

では、「不良品の発生」と「材料ロス」は具体的にどのような原因によって引き起こされているのでしょうか?

「不良品の発生」の根本原因は「5M+1E」で探る

不良品の発生原因を特定するには、製造プロセスを構成する各要素を網羅的に検証しましょう。その際に広く用いられるのが、「5M+1E」という品質管理のフレームワークです。

  • Man(人)
  • Machine(機械)
  • Material(材料)
  • Method(方法)
  • Measurement(検査・測定)
  • Environment(環境)

これらの頭文字を取ったものです。これらの観点から不良の根本原因を探ります。それぞれの分析観点をここから解説しますが、5Mについて別途理解を深めたい方は、以下の記事もあわせて参考にしてみてください。

関連記事:【分析例も紹介】「5M」とは?活用して製造現場を管理する方法

Man(人的要因):作業者

人的要因とは、作業者のスキル、行動、意識に関連する問題点を指します。主な要素は以下の通りです。

  • スキル不足・習熟度のバラつき
  • ヒューマンエラー(手順誤り、確認漏れ、誤判断、不注意など)
  • 作業標準の不遵守・形骸化
  • モチベーションの低下

特に、新人作業員や経験の浅い作業者による作業は、不良を発生させやすい代表的な要因の1つです。例えば、作業者の感覚や経験・カンコツに頼る部分が多い工程では、作業者間のスキル差がそのまま製品品質のバラつきに直結し、歩留まりに影響を与えます。

また、手順の誤りや確認漏れといったヒューマンエラー(人為的ミス)は、不良発生の直接的な原因となります。

ヒューマンエラーによる不良の発生は「仕方ない」と割り切られがちで、多くの製造現場が抱える根深い課題ですが、現場の仕組みづくり次第で未然防止が可能です。ヒューマンエラーがなぜ起こるのか、そのメカニズムと具体的な未然防止策について書かれた資料があるので、下の画像をクリックしてご覧ください。


製造業におけるヒューマンエラーの未然防止と具体的な対策方法

Machine(設備要因):機械・設備

機械や設備に起因する問題も、不良発生の大きな原因となります。主な要素は以下の通りです。

  • 設備の老朽化・精度劣化
  • メンテナンス不足(予防保全・予知保全の不備)
  • 治工具の摩耗・不備

長期間にわたる設備の使用は、部品の摩耗や劣化を引き起こし、設備の加工精度や動作安定性を低下させることがあります。これが、製品の寸法不良や外観不良などを生み出す原因となります。

それだけでなく、製品の品質を安定させるために使用する治具や工具が摩耗していたり、そもそも設計や選定が不適切であったりすると、加工精度の低下や作業ミスを誘発し、不良の原因となります。

設備の安定稼働は、高品質な製品を効率的に生産するための大前提です。設備トラブルによる生産性の低下を防ぎ、予防保全・予知保全を推進するための「設備保全のDX」について解説した資料も、現場の課題解決のヒントになるかもしれません。

下のリンクをクリックすると、資料のダウンロードが可能です。

 >>>「製造業の設備トラブルによる生産性低下を解消する設備保全のDX」を見てみる

Material(材料要因):原材料・部品

使用する原材料や部品の品質も、歩留まりに影響を与えます。例えば以下のような要素です。

  • 材料品質のバラつき
  • 不適切な材料選定

仕入れ先から納入される材料の品質が、ロットごと、あるいは納入時期によって不安定である場合、後工程での加工条件の調整が難しくなり、不良発生のリスクが高まります。

また、製品に求められる要求品質や加工方法に対して、そもそも使用している材料の選定がミスマッチである場合も、品質不良の原因となり得ます。

そもそもの原材料や部品が問題ないかどうか、あわせてチェックしてみてください。

Method(方法要因):作業方法・工程設計

作業のやり方や工程の設計に問題がある場合も、不良の温床となります。主な要素は以下の通りです。

  • 作業標準書の不備(分かりにくい、最新でない、存在しない)
  • 非効率な工程設計、無理な加工条件
  • 変化点管理の不徹底(4M変更時の対応不備)

特に、作業手順が明確に定められていない、内容が古く現状の作業と合致していない、あるいは作業者にとって分かりにくい手順書では、作業の標準化が進まずバラつきが生じ、不良が発生しやすくなります。

例えば化学メーカーの児玉化学工業株式会社は、技術の言語化が難しい作業が複数あり、かつ外国人労働者が混在する現場であることから、作業手順の教育が難しくたびたび品質不良が発生していました。

そこで動画マニュアルによる教育体制を整備し、正しい作業手順の浸透を実現しています。以下は、同社で実際に作成された動画マニュアルのサンプルです。

▼「ヤスリでバリをとる」動画マニュアル▼

※現場従業員が「tebiki」で作成

このような複雑な業務作業も、動画で手順をおさめれば「誰が見ても同じ解釈」になるので、外国人労働者も含め、正しい作業方法で進められるようになります。

製造業では動画マニュアルによる教育が進んでおり、多くの事例があります。詳しくは「製造業における動画マニュアル活用事例集」でご覧いただけるので、他社の製造業が動画マニュアルを通じてどのように現場教育を改善しているのか、参考にしてみてください。

>>>「製造業における動画マニュアル活用事例集」を見てみる

Measurement(検査・測定要因):検査方法・測定機器

製品が規格を満たしているかを確認する検査や測定のプロセスも、不良を見逃したり、誤った判断を下したりする原因となり得ます。そうすると、歩留まりの低下につながります。

主な要素は以下の通りです。

  • 検査基準の曖昧さ・不統一
  • 検査方法・測定方法の不備
  • 測定器の精度不良・校正不備

特に、良品と不良品を判定する基準が明確でなかったり、検査員によって解釈が異なったりすると、良品を誤って不良と判定したり、逆に不良品を見逃して後工程や市場に流出させてしまう可能性があります。

製造業における品質検査は、検査基準や作業手順のバラつきによる課題が多く潜んでおり、多くの現場で問題視されています。

課題解決の具体的な検査方法について学びを深めたい方は、PDF資料「製造業の品質不良を未然防止する次世代の品質検査」もあわせてご覧ください(下の画像をクリック)。


PDF資料を読んでみる

Environment(環境要因):作業環境

作業を行う環境も、間接的あるいは直接的に製品品質に影響を与え、不良の原因となることがあります。例えば温湿度、照度、清浄度、騒音、振動などが挙げられます。

こうした要素が適切に管理されていない場合、作業者の集中力低下を招いてヒューマンエラーを誘発したり、製品品質に直接悪影響を与えたりすることがあります。

「材料ロス」を引き起こすムダとその原因

歩留まり悪化のもう1つの大きな柱である「材料ロス」は、不良品としてカウントされる以前に、製品にならずに廃棄されてしまう材料の無駄を指します。

これらは日常的に発生しているため、「仕方のないもの」として見過ごされがちですが、意識して削減に取り組める余地があります。

設計起因のロス

製品設計そのものが、材料ロスを生みやすい構造になっている場合があります。主な要素は以下の通りです。

  • 歩留まりを考慮しない製品設計
  • 材料取り効率の悪い設計

こうした設計を改めて見直し、歩留まりに悪影響を及ぼすポイントがないかどうかを確認するのも手です。

例えば部品の配置(ネスティング)が悪く、抜きカスや端材が多く発生するような設計は材料ロスに直結し、歩留まり率の低下を引き起こします。

工程起因のロス

製造工程の特性や設定が原因で生じる材料の無駄です。「仕方ない」と見過ごされがちですが、改善の余地はあります。

例えば、必要以上に材料を削り取る「加工しろの過多」、プレス加工で出る「抜きカス」、樹脂成形の「ランナー」や「バリ」、塗装時に製品に付着しなかった塗料などが代表的です。

これらは、金型設計の工夫、加工条件の最適化、塗装方法の見直しなどで削減でき、歩留まり向上につながります。

作業起因のロス

作業者の行動や管理方法に起因する、比較的防ぎやすい材料ロスです。主な要素は以下の通りです。

  • 材料の誤投入、過剰投入
  • 段取り替え時の材料ロス
  • 有効期限切れによる材料廃棄

特に、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底や、適切な運搬・保管によって防げるロスは改善の余地があります。例えば仕掛品が、油やゴミで汚れ、使用できなくなるようなケースです。

5Sの各要素で具体的にどのような活動をするのか、活動内容も詳しく知りたい方は、数々の職場で5S改革を行ってきた専門家が解説する以下のセミナー動画もご覧ください。

>>>セミナー動画「生産性を高める5S活動 正しい運用に欠かせない【重要なS】とは」を見てみる

また、先入れ先出しの管理が徹底されていなかったり、需要予測の誤りから過剰な在庫を持っていたりすることで、材料が使用期限を過ぎてしまい、やむなく廃棄されるケースも、防ぐべき材料ロスです。

歩留まり改善のための具体的な対策

歩留まりの原因は「不良品削減」と「材料ロス削減」の2つの視点で分析できることを解説しました。そこでここからは、それぞれの視点における歩留まりの改善策について紹介します。

生産状況のリアルタイム可視化とKPIモニタリング

歩留まり改善を進める上で、「今、現場で何が起きているのか」を正確かつリアルタイムに把握することは不可欠です。しかし、多くの現場では、生産数、不良数、設備稼働状況などのデータが紙の作業日報やExcelに記録され、集計や分析に時間がかかったり、情報が古くなったりしがちです。

このような課題を解決するのが、現場帳票のデジタル化です。タブレット等を用いて現場で直接データを入力・記録し、それらが自動的に集計・グラフ化される仕組みを導入することで、以下のようなメリットが生まれます。

リアルタイムでの状況把握歩留まり率、不良発生状況、設備稼働率などをダッシュボード等でいつでも確認でき、異常の早期発見に繋がります。
データ収集・集計工数の削減手書きや転記、Excelへの入力といった手間がなくなり、現場担当者は本来の改善活動により多くの時間を割けます。
データに基づいた意思決定客観的なデータに基づいて問題の原因を分析し、データに基づいた対策を迅速に打つことが可能になります。
KPIモニタリングの効率化設定した歩留まり目標(KPI)に対する実績を容易に追跡でき、目標達成に向けた進捗管理が効率化します。関係者間での情報共有もスムーズになります。

このように、生産状況のリアルタイムな「見える化」は歩留まり改善の「基盤」と言えます。

例えば株式会社日本電気化学工業所(NACL)は、紙ベースの帳票管理ではデータ管理や記録がままならず、現場の状況をリアルタイムで把握することができていませんでした。

そこで、現場帳票をデジタル化(tebiki現場分析)し、データのリアルタイム監視を可能にしました。例えば、ダッシュボードで設備の温度データを定点観測できるようにし、通常パターンとは異なる挙動を早期発見し、品質不良の早期発見と未然防止を実現したのです。

▼同社の詳細事例(動画)▼

デジタル現場帳票による品質不良の改善事例は、以下のインタビュー記事で詳細をご覧いただけます。

インタビュー記事:品質不良の未然防止をリアルタイムデータで実現。異常値検知を迅速にできた理由。

紙やExcelによる現場帳票の運用に課題を感じ、「現場帳票のデジタル化」による改善効果や具体的な進め方について詳しく知りたい方は、以下の資料がおすすめです。現場帳票を電子化するメリットや費用対効果の考え方等がまとめられているので、あわせて参考にしてみてください。

>>>「はじめての現場帳票デジタル化ガイド」を見てみる

標準作業の徹底と改善

不良やロスの多くは、作業のバラつきや手順の不遵守から生じます。「誰が作業しても常に同じ品質・効率で作業できる」状態標準作業)を目指し、作業標準書を作成・見直しすることが基本です。

手順、使用工具、品質基準、異常時処置などを具体的かつ明確に定め、曖昧な表現や個人の「カンコツ」への依存を排除しましょう。

「作業手順が人によって違う」「カンコツがうまく伝わらない」といった課題は、作業標準化における共通の悩みです。「現場で本当に使われる」作業標準書を作成するための具体的なポイントについては、以下の資料が参考になります。

>>> 「カンコツが伝わる!『現場で使われる』作業手順書のポイント」を見てみる

設備・治工具の維持管理と改善

設備の安定稼働は、高品質な製品を効率的に生産するための大前提です。故障してから対応するのではなく、日常点検や定期メンテナンスを徹底し、計画的な予防保全や、センサーなどを活用した予知保全に取り組みましょう。

ただし、保全業務は実施のタイミングが比較的限られることから、保全業務スキルがなかなか現場全体で浸透せず、属人化する傾向にあります。

そこで、資料「製造業の設備トラブルによる生産性低下を解消する設備保全のDX」では、保全業務を形式知化し、標準化を進めるための具体的な方法について解説されています。下のリンクをクリックして、本資料もあわせて参考にしてみてください。

>>>資料「製造業の設備トラブルによる生産性低下を解消する設備保全のDX」を見てみる

ポカヨケ(フールプルーフ)によるヒューマンエラー防止

人間の注意力には限界があり、「うっかりミス(ポカミス)」は誰にでも起こり得ます。こうしたヒューマンエラーを根本的に防ぐためには、注意喚起だけでなく、そもそもミスが起こらないような仕組み、あるいはミスが起きても不良に繋がらないような物理的・システム的な工夫ポカヨケを導入することが重要です。

似たような考え方である「フールプルーフ」も重要で、これは「誰が操作しても、間違いが発生しないようにする」仕組み作りを指します。

ポカミス対策の重要性や取り組みへの考え方、製造現場ですぐに実践できるポカヨケ対策事例について知りたい方は、専門家によるセミナー動画「ポカミスゼロへ!ヒューマンエラーの未然予防「ポカヨケでつくる製造現場の未来」」もあわせて参考にしてみてください(下の画像をクリック)。


ポカミスゼロへ! ヒューマンエラーの未然予防「ポカヨケでつくる製造現場の未来」

変化点管理の徹底

人・設備・材料・方法(4M)などに変更があった場合(変化点)、予期せぬ品質問題を引き起こす可能性があります。

変更内容、理由、リスク評価、事前検証、関係者への周知、変更後の効果確認といった一連のプロセスをルール化した「変化点管理」を確立し、それを厳格に遵守することで、変更に伴うトラブルを未然に防ぎ、安定した生産を維持しましょう。

ただいま公開中のセミナー動画「トヨタ流品質管理に学ぶ!はじめての変化点管理」では、変化点管理の具体的な実践方法について解説しているので、あわせてご覧ください(下のリンクをクリック)。

>>>セミナー動画「トヨタ流品質管理に学ぶ!はじめての変化点管理」を見てみる

小集団活動による現場改善力の向上

トップダウンの指示だけでなく、現場の作業者が主体となって自分たちの職場の問題点を見つけ出し、知恵を出し合って改善に取り組む「小集団活動(QCサークル活動など)」は、歩留まり改善においても非常に有効です。

QCサークル活動の具体的な実践方法や進め方について知りたい方は、専門家が解説しているセミナー動画「QCサークル活動を成功に導く5つのポイントとは?」もあわせてご覧ください(下の画像をクリック)。品質改善に直結する実践的なヒントが得られるはずです。


QCサークル活動を成功に導く5つのポイントとは?

まとめ:「不良品発生」と「材料ロス」対策のうち、できることから着手

本記事では、製造業における歩留まり悪化の原因と、その具体的な改善アプローチについて解説しました。歩留まり低下は「不良品発生」と「材料ロス」が主な原因なので、これらを改善するための対策が重要になります。

具体的な対策としては、データのリアルタイム計測や作業標準化、教育訓練の質の向上、設備管理の徹底、変化点管理などが挙げられます。

そのための有効手段として、動画マニュアルによる分かりやすい手順の共有や、現場帳票のデジタル化による生産状況のリアルタイムな可視化とデータ活用が非常に有効であることもお伝えしました。もし少しでも動画マニュアルや現場帳票のデジタル化を検討される場合は、これらのサービス資料もあわせてチェックしてみてください(下の画像をクリック)。

 
 
 
 
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