現場改善ラボ 記事一覧 お役立ち情報 品質保証(QA)とは?品質管理(QC)との違い、業務課題の解決方法について解説

品質保証の質を高める「標準化」に役立つかんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」品質改善に必要なデータを簡単に収集・分析できる「tebiki現場分析」を展開する、現場改善ラボ編集部です。

品質保証とは製品やサービスの品質を保証し、顧客に信頼と安心を提供する重要な業務です。本記事では品質保証と品質管理の違いをはじめ、業務内容や直面しがちな課題、改善のための具体策をわかりやすく解説します。

併せて、「手順不遵守に起因する品質不良への考え方と対策」をテーマにした資料も公開中です。現場で起こりがちな「手順を守らないことによる不良」への具体的な向き合い方や、再発防止の仕組みづくりについて解説していますので、品質保証に携わる方は是非本記事と併せてご覧ください。

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目次

品質保証とは?品質管理との違いも解説

品質保証とは、製品やサービスが定められた品質基準を満たしていることを顧客に示し、安心と信頼を提供する活動です。設計から製造、出荷、アフターサービスに至るまで各プロセスに基準を設けると同時に、ルール策定や遵守状況の監査、関連文書の整備・管理を行うことで品質の一貫性を確保します。

たとえば、自社基準に沿った仕組みづくりや、国際規格であるISO9001の取得・維持も品質保証活動に含まれます。単なる検査による品質管理にとどまらず、組織全体で不良の未然防止や継続的改善に取り組むことが重要です。こうした取り組みを通じて、顧客との信頼関係を築き、企業のブランド価値や競争力の向上にもつながるのです。

品質保証と品質管理の違いは「役割と範囲」

品質保証と品質管理は混同されがちですが、それぞれ担う役割と目的が異なります。

品質管理は、製品やサービスの製造・提供過程において、品質を維持・向上させるための具体的な手法や活動です。主に現場レベルでの検査、測定、統計的手法、工程管理などを通じて、設定された品質基準を安定して満たすことを目的とします。

一方、品質保証は製品やサービスが一定の品質を確実に満たすことを社内外に対して保証するための仕組みや体制を整える活動です。設計段階から出荷後のアフターサービスに至るまで全体を統括し、文書化された手順や規格(例:ISO9001)に基づいて、継続的な品質確保と顧客への信頼提供を図ります。

わかりやすく表でまとめると、以下のような違いがあります。品質管理が「作る現場」の視点で品質をつくり込む活動であるのに対し、品質保証は「売る企業」の視点で品質を保証し、社会的信頼を得るための全社的取り組みだといえるでしょう。

責任範囲役割重要な視点
品質保証開発から製造、アフターサービスを含めた全範囲顧客に対し「品質を保証」する仕組みを整備・運用する顧客満足・信頼確保(=買い手視点)
品質管理主に製造・検査などの現場工程製品が定められた品質基準を満たすよう管理する品質安定・不良削減(=売り手視点)

関連記事:品質管理とは?品質保証との違いは?管理手法や品質改善のポイントを解説

品質保証で重要な3つの視点

品質保証の業務範囲は設計から製造、出荷、さらには顧客対応にまで及びます。関係者も多岐にわたり、全体像がつかみにくくなることもしばしばです。目的を見失わないためにも、下記の3つの視点を持つとよいでしょう。

顧客満足度

品質保証の最終的なゴールは、「顧客に信頼される製品・サービスを提供すること」です。たとえ社内基準を満たしていても、顧客が「これは品質が悪い」と感じれば、それは不良品と同じです。

例えば、異音やキズ、使いにくさといった”見逃されがちな品質”が、最終的にクレームやロスコストにつながることもあります。品質保証は、設計・製造現場にとっての「品質の基準」ではなく、あくまで顧客目線での「満足基準」で物事を評価し続ける必要があります

そのためには、明確な品質基準の設定やクレームへの迅速な対応に加え、継続的な改善活動が不可欠です。特に顧客の声やフィードバックを積極的に分析し、それを改善施策へとつなげる仕組み作りが求められます。

関連記事:再発防止につなげる「クレーム報告書」の書き方!例文やテンプレート、再発防止策の立て方も

PDCAサイクル

品質保証は、一度の改善で終わるものではありません。設計・製造・検査・出荷など各工程で生じる不具合やヒヤリハットを、都度「記録し、分析し、対策し、再発防止する」ことが重要です。これを実現するために欠かせないのがPDCAサイクルです。

▼PDCAサイクルの例▼

  • Plan(計画):品質向上のための目標と計画を立てる
  • Do(実行):計画を実行に移す
  • Check(評価):実施結果を評価・分析する
  • Act(改善):評価結果に基づいて改善策を講じる

PDCAは現場で「Do」ばかりが繰り返され、「Check」「Act」が形だけになることもあります。「Plan」で実態を捉えきれないと、対策が空回りします。そのため品質保証では、「なぜ起きたか」を深掘りし、教育や手順、設計を見直すなど、仕組みから改善することが大切です。PDCAを正しく回すことで、トラブル対応から未然防止型の品質保証へと近づけます。

未然防止

品質保証は、問題が起きてから対処する「後追い業務」だと思われがちですが、本来は「問題を起こさない仕組みづくり」が主な役割です。クレームや不具合が顕在化してからの是正だけでなく、潜在的なリスクを把握し、起こりうる失敗をあらかじめつぶしておく視点が求められます。

例えば、作業手順の不徹底によるミスが多い現場であれば、「教育方法」「手順書のわかりやすさ」「そもそも手順を守らなくても済む設計」など複数の角度から要因を分析し、未然に防ぐためのアプローチを考える必要があります。未然防止の精度が高いほど、クレームはもちろん社内不良や工程ロスも減り、安定した品質が確保できます。

そのためには、FMEA(故障モード影響解析やリスクアセスメントを活用して潜在リスクを洗い出し、設計や工程の段階で対策を講じることが求められます。

とはいえ、未然防止を実現するには、まず再発防止を徹底することが欠かせません。同じ不具合が繰り返されている状態では、潜在的なリスクの洗い出しや対策も曖昧になりがちです。繰り返すトラブルの再発防止を叶えるヒントについては、以下の専門家による解説動画もご覧ください。

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顧客に寄り添い信頼を築く「品質保証」の仕事内容10選

品質保証の業務内容は非常に多岐にわたります。企業によっては製造部門や品質管理部門が行っている内容も含みますが、下記が代表的な品質保証の仕事内容10種です。

これらの業務はすべて、「顧客に安心と満足を提供し続ける」という品質保証の本質的な目的に向けて、社内外の組織を巻き込みながら実践していく必要があります。現場レベルでは単なる「検査」や「対応」ではなく、顧客の声や期待を深く理解し、それを満たす仕組みと行動による実践が信頼につながるという意識を持つことが肝要です。

仕事内容一言説明
不良品・クレーム対応不良品の原因調査とクレーム対応、再発防止策を実施
品質検査・試験の実施製品が基準を満たしているか検査・試験で確認し、不良流出を防止
品質基準の策定・管理自社製品の品質基準を定め、顧客との契約に適合
工程管理・改善活動製造・業務工程の品質を監視し、改善を推進
データ分析・品質レポート作成品質データを分析し、報告資料を作成・共有
新製品・新サービス、工程変更の品質保証開発段階から関与し、設計・試作段階で品質基準を確立
サプライヤー管理・品質評価仕入先の品質状況を評価・監査し、信頼性を確保
ISO・国際規格の取得や維持管理ISO9001などの認証取得・維持と運用管理の実施
業界動向・法規制の情報収集最新の品質関連情報を収集し、社内基準に反映
品質トラブルのリスク管理や社内教育トラブル事例をもとにリスク予測・対策と品質教育を実施

不良品・クレーム対応

不良品やクレーム対応は品質保証の仕事の中でも特に緊急性が高く、その対応が企業の信頼を大きく左右します。 これは品質保証の仕事の中で最も緊急性が高く、その対応一つで企業のブランドイメージが大きく左右される、まさに最前線の業務です。

関連記事:再発防止につなげる「クレーム報告書」の書き方!例文やテンプレート、再発防止策の立て方も

重要なのは不良の原因を深く掘り下げ、根本原因(真因)を特定することです。このプロセスでは、「なぜ?」を5回繰り返す「なぜなぜ分析」のような手法が有効とされており、表面的な原因だけでなく、その背景にある作業方法や管理体制の問題にまで踏み込む必要があります。真因を特定したのちに、再発防止策の立案や実施まで行うことも非常に重要です。

クレーム対応は一見ネガティブな事象ですが、品質保証にとっては「信頼回復の最大のチャンス」でもあります。顧客に寄り添った誠実な対応や再発防止策を具体的な行動で示すことが、顧客の安心感につながります。顧客からの声は製品やサービスが抱える課題を教えてくれる貴重な情報源であり、それを活かすことでさらなる品質向上につなげることができます。

現場改善ラボでは、なぜなぜ分析の推進方法やすぐに使えるテンプレートが内包された別紙の資料をご用意しております。トヨタ自動車出身の講師による解説動画付きでわかりやすくポイントを説明しているため、是非お役立てください。

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品質検査・試験の実施

製品が仕様や要求事項を満たしていることを、客観的データに基づき保証する重要な最終工程です。材料の受け入れから製造工程、そして出荷前の最終確認に至る各段階で厳密な検査・試験を実施します。

関連記事:製造業の品質検査に潜む課題と改善策!検査員スキル向上事例も解説

その際、単に決められた手順をなぞるのではなく測定システム自体の信頼性(ゲージR&Rなど)を評価し、検査ルール全体を常に最適化することが不可欠です。「この検査は真に品質を保証できているか」という本質的な問いを常に持ち、検査の自動化やDX化を主導することも重要な役割です。検査を単なるコストではなく未来の不具合を防ぐための戦略的投資と位置づけ、その価値を組織全体に示すことも品質保証の責務です。

品質検査は文字通り品質を守る「最後の砦」ですが、検査員のスキルやヒューマンエラーによるミス、検査員ごとの基準のばらつきなど人的要因で不良を見逃してしまうことが発生しかねません。

検査員スキルを底上げし不良品発生の課題を削減する具体値な対策について知りたい方は、以下のリンクから詳しい資料をご覧ください。

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品質基準の策定・管理

顧客との契約や関連法規、そして自社の製造能力を深く理解し、企業が遵守すべき品質基準を策定・管理します。顧客要求が製造能力と乖離する場合には品質保証がハブとなって営業・設計・製造部門と粘り強く調整し、最適な着地点を見出すことが求められます。

その際、「顧客満足と事業採算性のバランスは取れているか」「将来の規制強化を見越しているか」といった戦略的視点が不可欠です。品質基準を単なる「決まり事」ではなく企業の競争力を左右する経営指標として捉え、その重要性を社内に浸透させるリーダーシップを発揮させることが期待されています。

工程管理・改善活動

製造工程が安定した状態にあるかを常時監視し、品質のばらつきを抑制するための改善活動を主導します。日々の不良率といった結果の数字だけでなく、SPC(統計的工程管理)を用いて工程の”プロセス”を管理し、異常の兆候を早期に検知します。

例えば、「なぜ工程能力指数(Cpk)が悪化したのか?」をデータから科学的に読み解き、製造部門と一体となって根本原因を解決に導きます。また、ルール遵守を確認する工程パトロールや、現場主体のQCサークル活動の質の高い運営を支援することも、持続的な品質安定化に不可欠です。

ここで重要なのが、QCサークルの実施そのものが目的となり、「形骸化していないか?」という視点です。QCサークル活動の本来の目的である「商品や業務における品質の向上」を達成するうえで必要な考え方や形骸化させない進め方について、専門家が解説した動画もございますので是非ご覧ください。

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データ分析・品質レポート作成  

社内外に点在する品質関連のデータを収集・分析し、具体的なアクションに繋がる「生きた情報」として関係者に展開します。これは、顧客に提出する体裁の整った「検査成績書」や、経営会議用のきれいなグラフ作りだけを指すのではありません。むしろ、「どの工程で、どの不良が、どれくらい増えているのか」といった現場の課題をタイムリーに可視化し具体的な改善策に結びつけることが、この業務の核心です。

例えば、不良データをパレート図で示して「今週取り組むべきは、Aラインの『傷』不良です」と現場に提示したり、特定の部品の受入検査データをまとめて「このサプライヤーの品質が不安定なため、監査が必要です」と購買部門に働きかけたりします。

レポートは数字を並べるだけでなく、事実と因果関係を示し「次に何を改善すべきか」を判断できる内容であることが重要です。ところが多くの現場ではデータが集まらない、分析から有効な打ち手を見つけられない、活用の仕方がわからないといった課題に直面しています。

こうした課題を解決し真のカイゼンにつなげるには、適切なアプローチと方法論が欠かせません。製造現場での効果的なデータ活用については、以下の画像から専門家による解説動画をご覧ください。

カイゼンにつなげる製造現場のデータ活用

新製品・新サービス、工程変更の品質保証

問題が起きてから対処するのではなく、問題の発生を未然に防ぐ「源流管理」の実践が求められます。開発の初期段階から品質保証が深く関与し、設計に潜む品質リスクを洗い出して対策を講じるのです。業界で求められるPPAP(生産部品承認プロセス)のような厳格な開発プロセスを主導・支援することも、重要なミッションの一つです。

また、材料・設備・工法などの変更(4M変更)に際しても、品質保証の役割は極めて重要だといえるでしょう。変更が品質に与える影響をあらゆる角度からレビューし承認プロセスを管理することで、意図せぬ品質低下を確実に防ぎます。

4M管理の実践には品質の担保だけでなく、歩留まり改善など様々なメリットがあります。4Mの視点からみる具体的な改善事例や、4M変更を現場に落とし込む「教育のコツ」については、以下のリンクから視聴できる解説動画で詳しく展開しているので、是非ご覧ください。

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供給業者(サプライヤー)・外注の品質管理状況の評価

優れた製品は、優れた部品や材料なくしては生まれません。そのため部品等を供給するサプライヤーや外注先の品質管理体制を評価し、管理することが重要です。納入品の品質データ分析や定期的な監査を通じてサプライヤーの実力を客観的に評価し、時にはパートナーとして品質向上のための指導や支援も行います。

こうした地道な活動が、サプライチェーン全体の品質レベルと競争力強化へと繋がるといえるでしょう。

ISO・国際規格の取得や維持管理

ISO9001などの国際的な品質マネジメントシステムを構築・運用することは、企業の社会的信頼を担保する重要な役割と言えます。認証の取得・更新に向けた申請業務や審査対応はもちろん、規格要求事項の改訂に合わせて社内ルールを更新し、システムが常に有効に機能し続けるよう維持管理せねばなりません。これは、グローバルなビジネスにおける信頼性のパスポートとも呼べる、非常に価値のある活動です。

ISO9001運用の課題として多くの現場が挙げるのが「紙マニュアルや記録の管理」です。これは更新漏れや記録探索の手間、教育で伝わりにくいなどの問題が生じ、規格に形式的に適合しても品質改善に直結しない状況を招きます。真に有効な仕組みとするには文書を単なる管理対象でなく、現場が使いやすい形で運用する工夫が必要です。

ISO9001の文書管理をラクにする・現場で使える形で運用する方法をお探しの方は、是非以下のリンクから別紙の無料ガイドブックをご参照ください。

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業界動向・法規制の情報収集  

業界の技術トレンドや国内外の法規制に関する最新情報を常に収集・分析し、自社の製品やプロセスへ迅速に反映させる必要があります。特に、RoHS指令やPFAS規制といった化学物質に関する環境規制は年々厳格化しており、これらの情報をいち早く掴み設計や調達の段階から対応を主導していくことは、コンプライアンス遵守と製品競争力維持のために不可欠といえるでしょう。

品質トラブルのリスク管理や社内教育 

過去の品質トラブル事例を徹底的に分析して再発防止策を講じるだけでなく、潜在的なリスクを予測し未然に防ぐための仕組みを構築・運用することが求められます。その一環として、ERP(基幹システム)やQMS(品質マネジメントシステム)も有効に活用するとよいでしょう。

さらに全部門の従業員を対象とした品質教育や内部監査を企画・実施することで、特定の部門に依存しない組織全体の強固な品質文化が醸成され、企業の継続的な成長を支える土台となるのです。

現場改善ラボでは、新人、中堅層、ベテラン層別の品質教育カリキュラムや、品質意識を高める実践的な教育手法についてまとめた教育資料集をご用意しております。是非お役立てください。

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ここまで、品質保証が現場で行う仕事内容について解説しました。品質保証は重要なポジションである一方、現場には多くの課題が存在しています。次章では、品質保証が直面しがちな課題について深堀りし、解決策を探ります。

品質保証が直面しがちな4つの課題

品質保証の仕事内容は製品のライフサイクル全てに関わるほど幅広いため、その過程で多岐にわたる複雑な課題が生じます。ここでは、多くの現場が直面している代表的な以下の課題を掘り下げていきます。

作業ミスや教育の不足が品質不良を引き起こしている

顧客からのクレームや工程内不良の原因は、しばしば「ヒューマンエラー」と結論付けられます。しかし、ミスをした個人を特定し注意喚起するだけでは、真の再発防止はできません。なぜなら、個人の「注意不足」で片付けてしまうと、ミスを誘発した環境や仕組みといった「真因」が見過ごされ、いずれ他の誰かが同じ過ちを繰り返してしまうからです。

例えば、「作業標準書と実際の作業が乖離している」「なぜその作業が必要なのか、理由や目的が共有されず、ただ手順の暗記になっている」「そもそもミスが起こり得る工程なのに、ポカヨケ(フールプルーフ)の仕組みが導入されていない」といった状況です。

また、教育がOJT任せになり指導者によって教え方やレベルがバラバラで、知識が属人化してしまうケースも少なくありません。「一度教えたから大丈夫だろう」という思い込みで作業者の理解度やスキルの定着度が十分に確認されないまま自己流の作業が横行すると、それが不良の原因となるのです。

単にマニュアルを整備するだけでなく、こうした「エラーを誘発する職場環境」そのものにメスを入れない限り、根本的な解決には至りません。具体的には、「教育」を起点とした全社的な「標準化」の推進が不可欠です。

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分析・改善に必要な現場データが収集できない

品質改善やトラブルの真因究明において、データに基づく客観的な分析は不可欠だといえます。しかし多くの現場では、その肝心なデータ=現場記録が「ない・使えない・信頼できない」という壁に直面しています。

データが「ない」検査記録などが紙媒体のままで、デジタルデータとして活用できない例:手書きの検査帳票、電卓と日報による手集計など
データが「使えない」データはあるものの、形式や内容が不統一で分析に使えない例:システム間のデータが連携していない、不良内容の入力が「キズ」「きず」などバラバラ
データが「信頼できない」収集されたデータ自体の正確性が低く、分析の根拠として信用できない例:校正期限が切れた測定器の使用、検査員ごとの判定基準のズレ

このような状態では、結局は担当者の「勘と経験」に頼った場当たり的な改善に終始してしまい、なぜなぜ分析も途中で行き詰まってしまいます。解決には、データ・記録活用のための仕組みを段階的に構築することが重要です。

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対応する範囲が広すぎて業務負荷が大きい

品質保証の業務は、設計段階の「源流管理」から製造、市場クレーム対応まで、製品のライフサイクル全体をカバーします。ISOの維持管理といった役割もあり、業務は多岐にわたります。

その結果、突発的なクレームや重大な工程内不良が発生すると品質保証部門が司令塔となり、現品確認、原因調査、暫定対策の立案、顧客への報告書作成といった「火消し業務」に忙殺されてしまいます。その結果、関係部署からの問い合わせも集中し、本来注力すべきデータ分析や再発防止策の検討、未然防止活動といった本質的な業務が後回しになるという悪循環に陥りがちです。

多くの担当者が「守りの品質保証」に追われ、「攻めの品質保証」に時間を割けないジレンマを抱えています。解決には、品質保証部門だけが奮闘する体制から脱却し、組織全体で品質を作り上げる仕組みへと転換することが不可欠です。

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クレーム対応などに追われトラブルの未然防止に時間がさけない

品質保証の重要な役割の一つは、不良品や品質トラブルを未然に防ぐことです。しかし、実際には顧客からのクレーム対応や不良品の処理に追われ、本来注力すべき未然防止のための活動に十分な時間を割けないケースが少なくありません

関連記事:【改善事例あり】製造業における品質不良の原因と8つの対策

問題が発生してからの対応では、企業の信頼低下やコスト増加につながるため、根本的な対策が必要です。データ分析を活用した予防策の強化や、品質管理体制の見直しが求められています。

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ここまで、品質保証が直面しがちな4つの課題について解説しました。では、これらの課題解決には何が必要なのでしょうか?次章では、品質向上に欠かせない「標準化・現場データの可視化」について解説します。

品質向上には「標準化・現場データの可視化」が欠かせない

前章で解説した「ヒューマンエラーの多発」「データ不足」「業務過多」「後手後手の対応」といった課題の根底には、「業務の属人化」と「状況の不透明さ」という共通の問題が潜んでいます。

この悪循環を断ち切り、品質向上の好循環を生み出すための両輪となるのが、「標準化」と「現場データの可視化」です。

守りの体制から脱却する「標準化」

標準化の目的は、個人のスキルや経験といった属人的な要素への依存から脱却し「誰が、いつ、どこで作業しても、同じ成果を出せる状態」を構築することにあります。これにより、品質のばらつきを根本から抑制することが期待できます。

ヒューマンエラーの多くは個人の注意不足だけでなく、形骸化した作業標準書やバラバラな教育方法といった「仕組み」に起因します。そこで重要になるのが、単なる手順書作りにとどまらない「本質的な標準化」です。具体例は以下の通りです。

  • 作業の標準化: なぜその作業が必要なのか、過去にどんな失敗があったのかといった背景や目的まで共有することで作業者は手順の意図を深く理解し、自己流の解釈を防ぐ
  • 教育の標準化: OJT指導者による教え方のばらつきをなくすため、共通の教育ツール(動画マニュアルなど)を用意したり、指導者自身の教育を行う
  • 判断基準の標準化: 外観検査の限度見本や、トラブル発生時の対応フローなど個人の感覚に頼りがちな部分の基準を明確にすることで判断の迷いをなくし、対応スピードを向上

これらの標準化は、品質を安定させるだけでなく技術伝承や新人教育を効率化し、品質保証部門が「火消し業務」に追われる状況から脱却するための強固な基盤となります。

もし、現場でこのような標準化不足によるヒューマンエラーが発生している場合、まずは以下のリンクから「ヒューマンエラー防止チェックリスト」をダウンロードしご活用ください。具体的な対策につなげるコツや事例もまとめています。

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攻めの品質管理を実現する「現場データの可視化」

現場データの可視化は、これまで担当者の「勘と経験」に頼りがちだった品質管理を客観的な事実に基づいた科学的なアプローチへと変革します。データという共通言語を用いることで、迅速かつ的確な意思決定が可能になります。

データが「ない・使えない・信頼できない」状態では、問題の真因特定に時間がかかり、改善活動も場当たり的になってしまいます。そこで、信頼できるデータを収集し、誰もが直感的に理解できる形に「見える化」することが極めて重要です。

  • 品質状況のリアルタイム可視化: 各工程の不良率や手直し工数などをダッシュボードで常時モニタリングし、異常の兆候を早期に検知
  • 問題の根本原因の可視化: パレート図で不良原因の優先順位をつけたり、散布図で関連性を分析したりすることで、データに基づいた真因の特定が可能に
  • 改善効果の可視化: 対策前後のデータを比較し、改善活動の効果を定量的に示すことで、現場のモチベーション向上や経営層への的確な報告に繋げる

このように現場データを可視化することで問題解決のスピードが飛躍的に向上し、品質トラブルを未然に防ぐ「攻めの品質保証」へとシフトすることが可能になるのです。

現場データを可視化する具体的な方法や運用のポイントについては、以下のリンクをクリックし詳しい資料をご覧ください。

>>品質目標達成を加速する「現場データ活用のポイント」について知りたい方はこちらをクリック!(無料公開中)

標準化・現場データの可視化を実現する2つの手段

ここまで、品質向上には「標準化」と「現場データの可視化」が不可欠であることを解説しました。しかし、日々の業務に追われる中でこれらの理想を現場に浸透させるのは容易ではありません。

そこで本章では、これらの取り組みを具体的かつ効率的に後押しする2つのツールとして「動画の活用」と「記録のデジタル化」を紹介します。

教育による標準化には「動画の活用」

OJT指導者のスキルによって教育の質がバラバラになったり、紙のマニュアルでは作業のニュアンスが伝わらなかったりすることは多くの現場が抱える課題です。こうした教育の属人化を防ぎ、標準化を強力に推進するのが「動画」の活用です。

実際に、「ヤスリでバリをとる」動画のマニュアルをお見せします。

※「tebiki現場教育」で作成

文字や静止画だけでは伝わりにくい作業の細かなニュアンスや一連の流れ、工具の扱い方、スピード感などを動画は直感的に伝えることができます。

さらにベテランの作業を撮影した教材は新人や外国人作業員でも直感的に内容を理解しやすく、危険箇所の伝達など安全教育にも有効です。さらに、言葉では伝えにくい熟練技能やノウハウを映像として残せるため、貴重な技術継承の課題も解決します。

動画の活用は、単なるマニュアルの置き換えではありません。「生きた標準」を現場に根付かせ、教育の質と効率を飛躍的に向上させるための極めて有効な手段なのです。

このような動画マニュアルを簡単に作成できるツールとしておすすめなのが、「tebiki現場教育」です。動画マニュアルをスマートフォンひとつで誰でもかんたんに作成できるほか、以下のような教育による標準化を後押しする機能が搭載されています。

主な機能メリット
豊富な動作環境PCだけでなくスマホやタブレットでいつでもどこでも視聴できる
動画シーン編集専門知識がなくても直感的な操作で誰でもかんたんに動画の編集ができる
自動翻訳機能目標や行動を外国人従業員にも伝えられる
レポート機能/テスト機能教育効果を可視化し、目標の「数値化」「評価」ができる

「tebiki現場教育」の豊富な機能や安心のサポート体制について詳しく知りたい方は、以下のリンクをクリックして別紙の資料をご覧ください。

>>品質意識を醸成する教育の標準化は「tebiki現場教育」におまかせ!機能詳細や事例を見る(無料公開中)

現場データの可視化・分析には「記録のデジタル化」

「勘と経験」に頼った品質管理から脱却するためには、客観的なデータに基づく判断が不可欠です。しかし、検査記録が紙帳票のままではデータの収集・集計に膨大な時間がかかり、リアルタイムな活用は望めません。

この課題を解決する第一歩が、現場記録の「デジタル化」です。タブレットやスマートフォンなどを活用して現場で直接データを入力する仕組みを整えることで、品質管理は劇的に変化します。

特におすすめなのが、帳票をデジタル化するツールである「tebiki現場分析」の活用です。

現場帳票電子化ツール「tebiki現場分析」パソコン・タブレット画像サンプル

「tebiki現場分析」は、現場帳票の作成、記録、承認を誰でもかんたんに行えるシステムです。

紙ベースの帳票では、印刷・記録・承認・集計・分析といった多くの工程に時間と手間がかかります。しかし「tebiki現場分析」を導入すれば、スマートフォンやタブレットなどの端末から直接データを記録・共有でき、リアルタイムで管理者が確認・承認可能です。

課題導入後の効果
デジタル化に対する不安や、「難しそう」という印象現場担当者が直感的に操作できる、ストレスのない画面設計
製品検査で異常が発生した際、紙の記録から対応履歴を探すのに時間がかかり、原因特定が遅れる異常発生時に自動でメール通知。リアルタイムで関係者に共有され、迅速な是正対応が可能に
現場帳票からExcel転記していたため、情報のズレや入力ミスが頻発現場から直接入力・写真記録が可能。さらに、グラフ化もその場で簡単に行えるため、効率的な分析が可能

tebiki現場分析による記録のデジタル化は単なるペーパーレス化にとどまらず、データドリブンな「攻めの品質保証」を実現するための不可欠なインフラといえるでしょう。

「tebiki現場分析」を詳しく知りたい方は、以下の資料をご覧ください。

>>見える化・分析の手間いらず!かんたんデジタル帳票「tebiki現場分析」の機能をみる(無料公開中)

まとめ

本記事で解説した品質保証の課題は、部門を「守りの活動」に留まらせる大きな要因です。この状況を打破する鍵は、「標準化」によって属人性を排除し、「現場データの可視化」によって先手を打つことです。動画の活用や記録のデジタル化は、その実現を強力に後押しするでしょう。

これらの取り組みは、品質保証部門の役割を、問題に対応する「最後の砦」から、未来のリスクを予測する「企業の成長エンジン」へと進化させます。それは、顧客満足と企業価値そのものを保証する「価値保証 (Value Assurance)」への変革にほかなりません。

実現へ向けたアプローチをお探しの方は、是非本記事でご紹介した「tebiki現場教育」やtebiki現場分析の活用を通じ、品質の担保や向上にお役立てください。

 
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