かんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki」を展開する現場改善ラボ編集部です。
PPEは作業員の安全を守る対策の1つであり、他の対策を講じても残るリスクから身を守るための最後の砦でもあります。しかし、製造現場の安全管理を任されている方の中には「PPEを支給しても、現場で正しく使われない」「種類が多すぎて選び方がわからない」といった悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、実際に製造業での勤務経験がある筆者の観点も踏まえ、PPEの基礎知識や主な種類、現場環境に適した選び方を解説します。さらに、ルールの形骸化を防ぎ、安全行動を「標準化」させるための運用方法まで解説するので、ぜひご一読ください。
目次
PPE(個人用防護具)とは?製造現場での役割と目的
PPEとは、作業員の命と健康を、落下物などの物理的な危険や、有害物質の吸入といった化学的な危険から守るための装備のことです。ここでは以下の順に定義や製造・建設現場等における役割について解説します。
- PPEの基本定義と製造業における必要性
- 「安全の最後の砦(とりで)」としての役割と多重防護の考え方作業リスクを低減するための基本的な安全対策としてのPPE
PPEの基本定義と製造業における必要性
PPEとは「Personal Protective Equipment」の略称であり、日本語では「個人用防護具(以下、PPE)」と呼ばれます。製造業や建設業において、作業者の身体を危険から直接守るために装着する装備の総称です。
PPEが重要な理由は、現場には機械への巻き込みや有害物質の飛散など、生身の人間では防ぎきれないリスクが常に潜んでいるからです。労働安全衛生規則の第二章「保護具等」*1に基づき、事業者には保護具の備え付けが、労働者にはその着用がそれぞれ義務付けられています。具体的には、ヘルメットや安全靴、防毒マスクなどが該当します。
もしルールが守られずPPEが正しく機能しなければ、取り返しのつかない事故や病気を招く恐れがあります。そうした意味で、PPEは働く人とその家族の生活を守り、同時に会社の信頼をも支える、なくてはならない存在と言えるでしょう。
「安全の最後の砦(とりで)」としての役割と多重防護の考え方作業リスクを低減するための基本的な安全対策としてのPPE
PPEの本来の役割は、頭・目・手・口といった作業者の身体の各部位を、物理的・化学的リスクから直接守ることです。製造現場の安全対策は、柵やカバーなどの「設備対策」、作業ルールなどの「管理的対策」、そして「教育・訓練」という複数の層で構成されています。PPEはこうした階層の中で、個人を直接保護する「最後の砦」に位置づけられます。
厚生労働省の指針*2に基づくと、優先順位として、まずは危険そのものをなくし、次に設備で封じ込めるのが原則です。しかし、現場では機械の故障や人のミスといった「想定外」が必ず起こります。そうしたトラブルが全ての対策層をすり抜けてきたとき、目や手を守れるのは、正しく装着されたPPEしかありません。そういう意味で、PPEは欠かせない最後の砦と言えます。
製造現場に潜むリスクとPPE(個人用防護具)が果たす防止効果
製造や建設の現場には、刃物による切創などの物理的危険から、有害物質の吸入といった化学的リスクまで多岐にわたる危険が潜んでいます。ここでは以下の順に具体的なリスクの種類と、PPEがどのように身体を守るのかを解説します。
- 物質・粉じん・飛散物による曝露リスク
- 針・刃物・工具による指・手の負傷リスク
- 作業環境下で起こる事故とPPEによる防止効果
物質・粉じん・飛散物による曝露リスク
有害物質や粉じんへの曝露は、長期間を経て深刻な健康被害を引き起こす重大なリスクです。目に見えない微細な粒子やガスであることも多く、作業者が気づかないうちに体内に蓄積される恐れがあります。
厚生労働省の「令和6年労働災害発生状況」*3に基づくと、製造業における休業4日以上の死傷者数は26,676人に上ります。前年より減少傾向にあるものの、依然として2万人以上が被災しており、製造現場が健康リスクの高い環境であることに変わりはありません。
こうした被害を防ぐには、現場の濃度や物質の性状に合った防じん・防毒マスク、保護メガネの着用が必須です。呼吸器や粘膜を物理的に遮断することで、将来的な健康被害を未然に防ぐ重要な役割を果たします。
針・刃物・工具による指・手の負傷リスク
製造業において脅威となっているのが、機械へのはさまれ・巻き込まれや刃物による負傷です。手は作業中、常に危険源に最も近づく部位であるため、重大な事故につながりやすい特徴があります。
「令和6年労働災害発生状況」によると、事故の型別死亡者数において「はさまれ・巻き込まれ」は110名でした。前年より2名増加しており、全体の死因の第3位となっています。自動化が進む現代においても、機械と人が接する場面でのリスクは依然として高く、命に関わる事故が後を絶ちません。
指・手の負傷リスクを低減するのが、耐切創手袋などの手・指のPPEです。データが示す通り、機械の稼働部や刃物に手が触れる瞬間のリスクを物理的に遮断するには、規格に適合した手袋の着用が有効と言えるでしょう。
ただし、回転する刃物や機械に触れる作業では、巻き込まれ防止のために決して手袋を着用してはいけません。素手なら軽傷で済むところが、手袋が巻き込まれることで指や腕を失うという重大災害に直結する危険があるからです。巻き込まれの恐れがある場合は絶対に手袋は着用しないでください。
作業環境下で起こる事故とPPEによる防止効果
高所からの墜落や転倒といった環境要因による事故は、ひとたび発生すれば死亡災害に直結する極めて危険なリスクです。身体全体に大きな衝撃を与えるため、人間の注意力だけでは防御できません。
「令和6年労働災害発生状況」に基づくと、全産業の死亡災害で最も多い原因は「墜落・転落」で188名でした。また、休業4日以上の死傷災害では「転倒」が36,378名と圧倒的最多を占めています。特に建設業の死亡者数は232名と前年より増加しており、足元の安全対策が急務の課題です。
こうした事態において、衝撃を吸収し命をつなぐのがヘルメットや安全靴、墜落制止用器具です。最多である転倒災害や、死亡事故トップの墜落を防ぐには、PPEの正しい装着が必須と言えるでしょう。
PPE(個人用防護具)の種類と保護部位別の機能
現場のリスクは多岐にわたり、守るべき部位によって適切なPPEは異なります。ここでは以下の順に各保護具の機能や素材別の特徴を解説します。
- 手を守るPPE|手袋(ゴム・素材別の特徴)
- 体を守るPPE|防護服
- 目・顔を守るPPE|ゴーグル・フェイスシールド
- 口・呼吸を守るPPE|作業用マスク
- 頭部を守るPPE|キャップ・保護具
- PPE製品ごとの機能と用途の違い
手を守るPPE|手袋(ゴム・素材別の特徴)
手袋は、作業内容と目的に応じて「素材」を使い分けることが重要です。製造現場では切創事故が多発しており、JIS規格(T 8165)等に適合した耐切創手袋が推奨されています。
従来はラテックス(天然ゴム)が主流でしたが、アレルギー対策としてニトリルゴム製が標準になりつつあります。ニトリルは耐薬品性や突き刺し強度に優れ、血液や体液の浸透を防ぐからです。
「蒸れる」「作業しにくい」という現場の不満が出ることは間違いありませんが、だからと言って手袋を外すと労働災害の原因となります。そのため、手袋を着用させる教育の徹底は必須と言えるでしょう。
体を守るPPE|防護服・保護衣
身体を守るPPEの役割は、有害物質や病原体の「浸透」を物理的に遮断することです。製造現場で化学物質を扱う場合は、JIS T 8115(化学防護服)に適合した製品が必要です。一般的な作業服は液体を吸い込んでしまい、かえって皮膚への接触時間を長くする危険性があるからです。
選定の際は、対象となる化学物質やウイルスの「透過耐性」を確認してください。現場の安全を守るには、覆うだけでは不十分で、何を防ぐのかを明確にした製品選びが必要です。
目・顔を守るPPE|ゴーグル・フェイスシールド
目や顔の粘膜は、飛来物や飛沫による被害を最も受けやすい部位です。眼球は再生能力が低く、一度の受傷が失明や重篤な感染症につながりかねません。そのため、リスクの形態に合わせてゴーグルやフェイスシールドを使い分ける必要があります。
実際に筆者は、放電加工の現場に従事していた際、ゴーグルの着用義務がなかったため、加工液が目に入り、早退して病院に直行した経験があります。
粉じんや化学薬品が充満する現場では、密閉性の高いゴーグルが有効です。一方、広範囲の飛沫を防ぐにはフェイスシールドが適しています。現場で多い「曇って見えない」との意見が出た場合、市販されている曇り止め液が有効です。
口・呼吸を守るPPE|作業用マスク
呼吸用保護具とは、空気中の粉じんや有害物質の吸入を防ぎ、気管支や肺などの呼吸器障害を予防するための防護具のことです。大きく分けて、現場の空気を浄化する「ろ過式」と、新鮮な空気を外部から送る「給気式」の2種類に分類されます。
ろ過式の中で最も一般的な「防じんマスク」は、専用の濾過材(フィルター)で物理的に粒子を捕集する仕組みです。一方、「防毒マスク」は吸収缶を用いて化学的に有害ガスを除去するものです。
近年では、電動ファンで送風して呼吸負担を減らす「電動ファン付き呼吸用保護具(PAPR)」の導入も進んできました。目に見えない微粒子やガスから従業員の健康を守るため、作業環境の濃度や物質に適合した作業用マスクを選定しましょう。
頭部を守るPPE|キャップ・保護具
頭部を守るPPEは、使用目的によって「衝撃からの保護」と「異物混入の防止」の2つに分類できます。
建設や製造現場では、飛来・落下物や墜落の危険があるため、労働安全衛生規則に基づき国家検定に合格したヘルメット(保護帽)の着用が義務付けられています。一方、食品工場や医療現場で用いられる使い捨てキャップは、毛髪の落下や付着を防ぐ「衛生管理」が主目的であり、衝撃保護の機能はありません。
また、ヘルメットは素材ごとに耐用年数が決まっています。見た目に異常がなくても内部の劣化は進行するため、ヘルメットは定期的に交換しましょう。
PPE製品ごとの機能と用途の違い
PPEを選定する際は、現場のリスクレベルと製品の「規格」を正しく照合させることが重要です。一見似たような製品でも、適用される公的規格によって保護性能や用途は厳格に区別されているからです。
例えば足元の保護一つとっても、重作業に対応したJIS規格(安全靴)と、軽作業向けのJSAA規格(プロスニーカー)では、つま先が耐えられる衝撃荷重が異なります。マスクにおいても、医療用(サージカル)と産業用(防じん)では捕集対象が全くの別物です。
コスト優先で規格外品や用途違いの製品を選べば、事故を防げないばかりか、労働安全衛生規則の義務違反を問われかねません。「何から守るための装備か」と明確に判断する能力が管理者には求められます。
製造業向けPPE(個人用防護具)の選び方と管理のポイント
PPE選定において最も重要なのは、現場のリスクレベルに適した規格を満たしつつ、作業者がストレスなく着用できる製品を選ぶことです。ここでは以下の順で、形骸化を防ぐ選定基準と、法的責任を果たすための管理手法を解説します。
- 作業内容・リスクに応じたPPE選定の考え方
- 素材・耐久性・作業性を考慮した選び方
- 企業として行うPPEの管理・入出庫管理
- 製品表・仕様表を活用した比較方法
作業内容・リスクに応じたPPE選定の考え方
PPEを選定する際に考えるべきなのは、リスクアセスメントで特定された危険源に対し、防御できる機能があるかどうかです。「とりあえずこれを着けておけば安心」という安易な汎用品の流用は、重大事故の温床となりかねません。
労働安全衛生規則 第593条には次の通りに定められています。
労働安全衛生規則 第593条
事業者は、著しく暑熱又は寒冷な場所における業務、多量の高熱物体、低温物体又は有害物を取り扱う業務、有害な光線にさらされる業務、ガス、蒸気又は粉じんを発散する有害な場所における業務、病原体による汚染のおそれの著しい業務その他有害な業務においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、保護衣、保護眼鏡、呼吸用保護具等適切な保護具を備えなければならない。
ここでいう「適切な」とは、現場の飛来物、粉じんなどのリスクの「程度」に見合った性能を持つ製品を指します。
例えば、同じ防じんマスクでも「解体作業」と「溶接作業」では、選ぶべき国家検定の区分が異なります。危険の種類や濃度を数値化し、適合する規格品を選ぶようにしてください。
素材・耐久性・作業性を考慮した選び方
現場の着用ルールを定着させるには「作業性」と「快適性」を重視してPPEを選ぶことが重要です。現場がPPEを着用しない最大の理由は「暑い」「動きにくい」「曇る」といった不快感にあるからです。
実際に、最新の製品では通気性に優れたメッシュ素材の作業服や高機能な曇り止め加工、長時間着けても疲れない軽量ヘルメットなどが開発されています。
「作業がしやすい」製品への投資は、決して無駄なコストではありません。そのため、作業現場の安全を守るために素材・耐久性・作業性も意識してPPEを選定してください。
企業として行うPPEの管理・入出庫管理
劣化したPPEを使い続けることは、防御機能を失った状態で作業させるのと同じであり、万が一の際に法的責任を問われる可能性があります。
日本ヘルメット工業会*5の指針に基づくと、PCやABSなどの熱可塑性樹脂製は3年以内、FRP等の熱硬化性樹脂製は5年以内での交換が推奨されています。特に注意すべきは、外観に異常がなくても経年劣化が進むため、必ず期限内で更新しなければならない点です。
管理を徹底するため、使用開始日を本体に明記し、台帳で交換時期を可視化する仕組みを構築してください。
製品表・仕様表を活用した比較方法
現場に適したPPEを導入するには製品表・仕様表を活用した比較をする必要があります。データで選ぶことで、コストパフォーマンスと安全性を客観的に判断できるからです。
具体的には、耐切創手袋であればEN規格のレベル数値(カットレベル)、化学防護手袋なら透過時間を比較します。また、重量(g)の違いは作業疲労につながるため、数グラム単位での検討も必要でしょう。
PPE(個人用防護具)の正しい着用・着脱手順と運用上の注意点
PPEは正しい順序で装着し、汚染を広げないよう慎重に脱ぐことが大切です。ここでは、感染や事故を防ぐための以下の事項を解説します。
- 作業前に確認すべきPPEの基本的な着用順
- 装着・着脱時に起こりやすいミスと対策
- 使用後の保管・廃棄ルールと注意点
作業前に確認すべきPPEの基本的な着用順
PPEは定められた「着用順序」を厳守することが必須です。順序を間違えると、防護具同士の隙間から有害物質が侵入したり、装着中に清潔な面を汚したりするリスクが生じるからです。
具体的には以下の順で装着します。
- 作業服・安全靴
- ヘルメット
- ゴーグル
- 保護手袋
手袋が「最後」の理由は、マスク装着後のフィットチェックを素手、または清潔な手で行う必要があるからです。
分厚い革手袋や耐切創手袋を先に着けてしまうと、指先の感覚が鈍り、あご紐の締め付けが甘くなります。これでは転倒時や衝撃を受けた瞬間にヘルメットが脱げ、頭部を守れません。正しい着用手順を守って、身を守りましょう。
装着・着脱時に起こりやすいミスと対策
現場で多いミスは、PPEを作業中に取り外したり脱いだりすることです。特に「暑い」「きつい」という理由で正しい着用を怠ると、万が一の飛来・落下物事故で致命傷を負いかねません。
考えられるのは「ヘルメットを浅く被りあご紐を緩める」「保護メガネを額に上げる」といった行為が挙げられます。これではPPEは適切に機能しません。また、ボール盤などの回転機械作業で誤って手袋を着用し、巻き込まれる事故も考えられます。
対策として、「あご紐は指一本分の余裕まで締める」「回転作業エリアでは手袋禁止」といった具体的な数値や禁止事項をルール化し、監視し、指摘できる現場を作ることが大切です。
使用後の保管・廃棄ルールと注意点
使用後のPPEを適切に管理・廃棄することは、次回使用時の安全性を保証するために必須です。物理的な衝撃から守るPPEは、見た目が綺麗でも「見えない劣化」が進行している場合があるからです。
特にヘルメットの保管には注意しましょう。日本ヘルメット工業会の指針に基づくと、樹脂製品は紫外線や高温で強度が低下するため、直射日光の当たる作業車のダッシュボードや窓際での保管は厳禁です。
また「一度でも大きな衝撃を受けたヘルメットは、外観に異常がなくても即廃棄する」というルールを徹底してください。内部の衝撃吸収ライナーが潰れている可能性があり、次は頭部を守れないからです。
PPE(個人用防護具)を導入しても安全性が安定しない理由
多くの現場でPPEを支給しても事故がなくならないのは、運用が「人の判断」に依存していることが原因と考えられます。ここでは、ルールの形骸化や意識の個人差など、以下の3つの課題を解説します。
- 着用・装着方法が作業者ごとに異なり、安全ルールが守られない
- 「このくらいなら大丈夫」という個人判断が事故・ヒヤリハットを招く
- 紙マニュアルや口頭教育では危険が伝わらず、安全意識が高まらない
着用・装着方法が作業者ごとに異なり、安全ルールが守られない
PPEの支給で安全が確保されない理由として考えられるのは、装着方法が作業者の裁量に委ねられ、現場内でバラつきが生じている点にあります。防護具は、正しい手順で装着して初めて、カタログ通りのスペックを発揮するものです。
しかし現実には、ベテランほど「暑い」「面倒だ」と自己流に着崩す傾向があります。こうした自己流により、PPEの隙間から有害物質が侵入し、労働災害が引き起こされます。
実際に、特定化学物質障害予防規則(第38条の21 第9項)*8の改正により、金属アーク溶接等作業において年1回の「フィットテスト」が義務化されました。これは「着けている」だけでは不十分という国からの強いメッセージと言えるでしょう。全員が規格通りに隙間なく着用できてこそ、真の安全対策となります。
「このくらいなら大丈夫」という個人判断が事故・ヒヤリハットを招く
次に挙げる課題は「このくらいなら大丈夫」という個人の主観的な判断が、重大な事故やヒヤリハットを誘発していることです。特に経験豊富な従業員は、過去の成功体験からリスクを過小評価する「正常性バイアス」に陥りやすい傾向があります。
労働災害統計などで知られるハインリッヒの法則に基づくと、1件の重大事故の背後には29件の軽微な事故と、300件のヒヤリハットが存在します。
「手袋を外した一瞬」や「ゴーグルを省略した短時間」に事故は発生します。個人の判断を挟む余地をなくし、「エリアに入ったら例外なく着用」という厳格なルールでの運用を心がけてください。
紙マニュアルや口頭教育では危険が伝わらず、安全意識が高まらない
安全意識が定着しない原因として、文字ばかりの紙マニュアルや口頭指導に依存している現状が挙げられます。こうした従来の手法では、現場の「なぜ着用が必要なのか」という納得感を引き出すことが難しいと考えられます。
特に、外国人労働者や若手が増える介護・建設現場において、難解な文章は読まれません。危険のイメージが湧かないまま作業に従事させることは、無免許運転をさせるのと同義と言えるでしょう。
効果的なのは、動画を用いた視覚に訴えかける教育です。動画を使えば、視覚を通じてリスクを感情で理解させられます。
PPE(個人用防護具)運用を標準化し、安全性を高めるための考え方
現場の安全を守るには、個人の経験則ややる気に依存せず、組織全体で運用を統一する「標準化」が必要です。ここでは具体的に以下の事項を解説します。
- 誰が作業しても同じ判断・同じ使い方ができる状態を整備する
- PPEの装着を標準作業として現場に定着させる
- PPEの使い方を「見て分かる」形で共有する
- 現場教育のばらつきを抑え基準を統一するには「動画」が効果的
誰が作業しても同じ判断・同じ使い方ができる状態を整備する
安全性を担保するために必要なのは、PPE着用の判断から「個人の裁量」を徹底的に排除することです。ベテランと新人で判断が分かれる曖昧なルールが、事故を招く原因となるからです。
リスク低減措置は属人性を排した仕組みでなければなりません。そこで「粉じんがひどい時」という感覚的な基準ではなく「第1管理区域内は常時着用」といった客観的な基準を設定します。
迷う余地のない明確なルールがあって初めて、新人も熟練者も同じ安全行動が取れるようになります。
PPEの装着を標準作業として現場に定着させる
PPEの着用を業務フローの一部として標準作業」に組み込む必要があります。防護具はオプションではなく、仕事を進めるための必須の工程だからです。
例えば「機械のスイッチを入れる」前に「保護メガネを装着する」という工程を入れ、それを完了しない限り次の作業に進めない仕組みを作ります。
息をするように自然に着用できる状態を作るには、教育だけでなく、業務プロセスそのものを再設計することが効果的です。
PPEの使い方を「見て分かる」形で共有する
正しい着用方法を定着させるには、文字だらけのマニュアルではなく「見て分かる」資料を活用するのがおすすめです。緊急時や多忙な現場において、長い文章は読まれないのが現実だからです。
ヒューマンエラー防止の観点で言えば、人間の脳は文字よりも画像情報の処理に優れています。更衣室や作業エリアの入り口に、正しい着用姿(〇)と悪い例(✕)を並べた大きな写真を掲示してください。
「どこまで覆うか」「紐はどうするか」が一目瞭然であれば、外国人労働者や新人でも迷わず正しく装着できます。
現場教育のばらつきを抑え基準を統一するには「動画」が効果的
「拠点や指導者によって作業の教え方が変わって品質が安定しない…」
こうした「教育の属人化」を解消する有効な手段が動画マニュアルです。文字や静止画だけでは細かなニュアンスが伝わりづらく、受け取り手の「解釈」にズレが生じるからです。
動画であれば、正しい動きやタイミングを「見たまま」再現できるため、誰が見ても同じ基準で作業を理解できます。実際に、動画活用によって法人全体の技術統一と教育コスト削減に成功した事例を紹介します。
| 導入前の課題 | 導入後の成果 |
|---|---|
| ・拠点ごとに手順がバラつき、標準化されていなかった ・紙マニュアルでは伝わらず、読まれているかも不明 ・OJTに最大3ヶ月かかり、指導員の負担が重かった | ・動画制作を通じて、法人全体の技術 ・手順を統一 ・予習復習の効率化で、OJT期間を「1ヶ月」へ短縮 ・現場主導でマニュアルを作る改善文化が定着 |
社会福祉法人若竹大寿会*9では、拠点ごとに手順が異なり、紙マニュアルが形骸化している課題を抱えていました。また、新人教育(OJT)には最大3ヶ月を要し、指導役であるベテラン職員の負担増も深刻でした。
そこで、現場主導で簡単に作成・共有できる動画マニュアル「tebiki現場教育」を導入し、介護技術の標準化に着手。
その結果、動画による視覚的な手順統一が実現しました。動画での予習・復習が定着したことで、つきっきりの指導時間を大幅に削減でき、OJT期間を従来の約3分の1である「1ヶ月」へ短縮する成果を上げています。
まとめ|PPE(個人用防護具)の効果を最大化するために必要な視点
PPEは、働く人を守るための「最後の砦」です。しかし、高機能な製品を導入するだけでは現場の事故は防げません。リスクに見合った適切な規格選定、期限管理、そして「正しい着用手順」の徹底があって初めて、その機能が発揮されます。
事故を防ぐには、個人の経験則に頼る運用から脱して、組織全体で安全ルールを「標準化」することが必要です。その有効な手段として、視覚的に手順を統一できる「動画マニュアル」の活用をおすすめします。言葉では伝わりにくい細かな動作も、動画なら正確に共有できます。
正しい知識と教育体制を整え、誰もが安心して働き、無事に帰れる作業現場を築き上げましょう。
参考元/引用元
*1:e-GOV「労働安全衛生規則 第二章 保護具等」
*2:厚生労働省「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」
*3:厚生労働省「令和6年における労働災害発生状況について」
*4:e-GOV「労働安全衛生規則 第593条」
*5:日本ヘルメット工業会「FAQ(よくある質問と回答)」
*6:一般社団法人 職業感染制御研究会「個人用防護具(PPE)の脱着手順」
*7:厚生労働省「石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」
*8:e-GOV「特定化学物質障害予防規則(特化則)第38条の21」
*9:社会福祉法人 若竹大寿会「介護技術を動画マニュアルで統一。法人全体で文化を作り上げる!」









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