※本記事は、物流現場で18年のキャリアを持ち、物流現場の作業から安全責任者まで歴任した筆者が実務経験に基づいて執筆しています。
テールゲートリフターの特別教育は、2024年2月より労働安全衛生規則が改正され義務化されました。改正の事実は知っていても、具体的な教育カリキュラムや実施方法に不安を感じている方も少なくないはずです。
本記事では、テールゲートリフターの特別教育で実施すべき講習内容や時間、受講方法といった基本知識を解説します。さらに、現場の安全意識を根本から高めるための安全教育のコツについてもご紹介します。
是非最後までお読みいただき、コンプライアンス違反の回避だけでなく、安心して働ける現場づくりの参考にしてください。
関連資料:【元労基署長監修】社内実施による本質的な特別教育の進め方
目次
テールゲートリフターの特別教育が義務化された背景
2024年2月よりテールゲートリフターの特別教育が義務化された背景には、相次ぐ重大な労働災害の発生があります。
陸上貨物運送事業労働災害防止協会の資料によれば、令和2年に発生したテールゲートリフター関連の事故のうち、約60%が不適切な使用によるものでした。さらに、そのうちの約23%が休業見込み60日以上の重大な災害となっており、他の事故と比較しても被災の程度が重い傾向にあります。
物流現場の安全責任者として、多くの事故に深くかかわってきた筆者の経験からいうと、現場には「この程度の高さなら大丈夫だろう」という慢心や、作業に集中するあまり足もとへの注意がおろそかになる瞬間が散見されます。
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頭では理解していても、実際の動作が伴わないことが事故の引き金になります。そのことからも、作業に従事する者全員に特別教育を受講させることは、事故撲滅のため必須です。
次章では、「実施すべき講習科目はどのようなもの?」という疑問にお答えします。
テールゲートリフター特別教育で実施すべき講習科目と必要な受講時間
本章では、テールゲートリフターの特別教育で実施すべき教育科目とその詳細について以下で解説します。
- 学科教育(計4時間)
- 実技教育(2時間)
関連資料:【元労基署長監修】社内実施による本質的な特別教育の進め方
学科教育(計4時間)
学科教育は、座学を通してテールゲートリフターの構造や危険性、関係法令に関する基礎知識を習得します。
現場で発生する事故の多くは知識不足や誤った判断が引き金となるため、まずは理論をしっかりと理解することが重要だからです。
カリキュラムの内容と時間は以下の通り定められています。
▼テールゲートリフター特別教育の”学科教育”の内容
| 項目 | 時間 | 詳細 |
|---|---|---|
| テールゲートリフターに関する知識 | 1.5時間 | ・種類、構造、取扱い方法 ・点検および整備の方法など |
| テールゲートリフターによる作業に関する知識 | 2時間 | ・荷の種類と取扱い方法 ・台車の種類、構造、取扱い方法 ・保護具の着用、災害防止について |
| 関係法令 | 0.5時間 | 労働安全衛生規則などの関係条項 |
実技教育(2時間)
実技教育では、実際の機材を用いて、正しい操作方法や安全確認の手順を学びます。
学科で学んだ知識を実際の動きに落とし込み、「知っている」状態から「正しく行える」状態へと引き上げる必要があるためです。
▼テールゲートリフター特別教育の”実技教育”の内容
| 項目 | 時間 | 詳細 |
|---|---|---|
| 実技教育 | 2時間 | テールゲートリフター操作の方法 |
次章では、テールゲートリフターの特別教育を受講させず作業に従事させた際の罰則について解説します。
テールゲートリフターの特別教育を実施せず作業させた場合の罰則
先ほどからお伝えしているように、テールゲートリフターの作業に従事する者に特別教育を実施することは、労働安全衛生法で定められた事業者の義務です。詳細について、以下の2つで解説します。
- 特別教育を実施しなかった場合の罰則
- 特別教育の記録の3年間保管を怠った場合の罰則
関連資料:【元労基署長監修】社内実施による本質的な特別教育の進め方
特別教育を実施しなかった場合の罰則
テールゲートリフターの特別教育は、労働安全衛生法第59条3項により事業者に義務付けられています。
▼労働安全衛生法 第59条3項
事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。
特別教育を実施せず、労働者に作業を行わせた事業主は、第109条にのっとり、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処されます。
▼労働安全衛生法 第119条
次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 (中略)第五十九条第三項
特別教育の記録の保管を怠った場合の罰則
労働安全衛生法第103条に基づき、事業主は特別教育を実施した記録を保管しておかなければなりません。
▼労働安全衛生法 第103条
事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、この法律又はこれに基づく命令の規定に基づいて作成した書類(次項及び第三項の帳簿を除く。)を、保存しなければならない。
これは法令遵守の証明となるだけでなく、現場の安全管理体制を客観的に示す重要な書類となります。
怠った場合、労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金に処されます。
▼労働安全衛生法 第120条
次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 (中略)第百一条第一項又は第百三条第一項の規定に違反した者
次章では、「特別教育はどのように受講させればいい?」という疑問にお答えします。
テールゲートリフター特別教育3つの受講方法と費用相場の目安
本章では、テールゲートリフターの特別教育を具体的にどのように受講させればよいのか、以下の3つの選択肢とそれぞれの費用相場について解説します。
- 有識者を講師とし社内で実施する
- 外部研修機関の施設で受講する
- 外部から講師を招き社内で受講する
関連資料:【元労基署長監修】社内実施による本質的な特別教育の進め方
有識者を講師とし社内で実施する
特別教育は、法令で規定された科目と時間数の内容を社内で行うことが原則です。自社のスケジュールに合わせて実施できるため、業務への影響を最小限に抑えられるというメリットがあります。
講師については、公的な資格要件は定められていません。ただし、学科および実技の科目について十分な知識と経験を持つ者が担当する必要があります。実務に精通したベテラン作業員や安全管理者が適任といえるでしょう。
【費用相場】
社内で実施する場合、大きな費用はかからず「教材費のみ」で済みます。
▼教材費の一例
| 項目 | 費用(目安) |
|---|---|
| 受講者用テキスト(作業者必携) | 990円/1冊 |
| 安全作業ハンドブック(受講記録用) | 165円/1冊 |
| 学科教育補助用の動画教材(DVD) | 22,000円 |
詳細は、各研修機関にお問い合わせください。
外部研修機関の施設で受講する
陸災防(陸上貨物運送事業労働災害防止協会)や各都道府県の技能講習協会、コベルコ教習所といった民間の研修機関が開催する講習会に参加する方法です。
専門の講師による質の高い講義が受けられるほか、専用の設備で実技教育を行えるため、自社に教えられる人材や機材がない場合に最適です。ただし、研修機関によっては「学科教育のみ」の場合もあるため、事前の確認が欠かせません。
【費用相場】
- 1人あたり:約12,000円〜14,000円(学科+実技の場合)
※筆者調べ。詳細は各研修機関へお問い合わせください。
外部から講師を招き社内で受講する
外部の研修機関の中には、講師が会社まで出向いてくれる”出張講習”に対応しているところもあります。
自社に講師を招くことで、受講人数が多い場合に移動時間や交通費を削減しつつ、プロの指導を受けられるというメリットがあります。自社の車両を使って実技を行えるため、より実践的な教育が可能です。
【費用相場】
- 不明(研修機関や規模によりさまざま)
講師の派遣費用や交通費などが別途発生するため、状況によって変動します。詳細は各機関へ見積もりを依頼し確認してください。
テールゲートリフターの事故を撲滅するには、ここまでご紹介した特別教育を実施するだけでなく、日常的に安全教育を行い、作業員の安全意識を高めておく必要があります。次章では、テールゲートリフターの安全教育のポイントを徹底解説します。
関連資料:~製造業・物流業の事例から学ぶ~動画マニュアルを使った安全教育の取り組みと成果
「現場で実践できる」テールゲートリフター安全教育のポイント
特別教育を検討している現場責任者は、現場内でのテールゲートリフター安全教育の実施についても検討していると思います。社内でできる安全教育のポイントについて以下の4つで解説します。
- ヒヤリハットや危険の可視化
- 「現場で読まれる」安全作業手順書の整備
- 定期的なKYT(危険予知訓練)の実施
- 作業指揮者を中心に「慌てない、急かさない」環境づくりに取り組む
ヒヤリハットや危険の可視化
現場に潜む危険性を、単なる言葉ではなく目に見える形で伝えることが重要です。作業員は危険を直感的に捉えることで、自分事として安全意識を高められるからです。その際、有効な手段となるのが動画の活用です。
具体例として、こちらの現場では、この動画を作業員に視聴させ、危険な瞬間を可視化して伝えています。
▼ロールボックスパレットが強風でホーム下に落下する実際の映像
動画なら、日々の作業の中に潜む危険であると認識しやすく、おのずと1人ひとりの安全意識を向上させます。
ちなみに、この動画は動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」で作成されました。詳細が気になる方は、以下のリンクから資料をダウンロードしてご覧ください。
>>動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を詳しく見てみる
「現場で読まれる」安全作業手順書の整備
事故や労災が起きがちな現場の共通点として、「作業標準書が整備されていない」、あるいは「マニュアルはあるが読まれておらず、手順にバラつきがある」という点が挙げられます。どれほど立派な手順書を作っても、現場で読まれなければ意味がありません。
そこで重要なのが、一目で内容が理解できる工夫です。特にテールゲートリフターの操作のように動きを伴う作業は、動画でマニュアル化するのが最も効果的です。
例として物流企業である株式会社近鉄コスモスは、以下のようなフォークリフトの搬送作業の禁止事項を伝える動画を作成し、効率的な教育を実現しています。
※「tebiki現場教育」で作成
なお、この動画は、誰でもかんたんに動画マニュアルが作れる動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」で作成されました。詳細が気になる方は、以下のリンクから資料をダウンロードしご覧ください。
>>動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を詳しく見てみる
定期的なKYT(危険予知訓練)の実施
KYT(危険予知訓練)は、日常の作業に潜む危険要因について少人数で意見を出し合い、安全を先取りするための訓練です。定期的に行うことで、自分1人では気づけなかった危険の芽を見つける力を養い、現場全体の安全意識を底上げできます。
KYT(危険予知訓練)の基礎知識については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:【例題あり】倉庫作業のKYT(危険予知訓練)で事故対策!手順から成功のポイントまで紹介
一般的にはイラストシートを使用しますが、動きがないため状況が伝わりにくいという側面もあります。そこでおすすめなのが、動画を用いたKYTです。実際の作業風景を映し出すことで、気づきの範囲が広がり、決定した対策の周知もより確実に行うことができます。
『動画KYT』が気になる方は以下のリンクをクリックし、資料をダウンロードして詳細を確認してください。
>>資料「労災ゼロ!形骸化したKYTから脱却する動画KYTとは」をダウンロードする
作業指揮者を中心に「慌てない、急かさない」環境づくりに取り組む
物流現場の多くの事故に携わってきた筆者の経験上、事故の背後には必ずといっていいほど”焦り”が存在します。
「時間に追われている」「急かされている」という状況下では、人は冷静な判断力を失い、「これくらい大丈夫だろう」とルールを無視したり、安全確認の工程を飛ばしたりしてしまうものです。
こうした焦りを排除するためには、作業員個人の努力に頼るのではなく、指揮者が中心となって落ち着いて作業に取り組める環境を整えることが重要です。
現場の雰囲気は、指揮者の方針が色濃く反映されます。無理な作業計画を見直し、安全を最優先とする姿勢を明確に示すことで、事故を未然に防ぐ環境になります。
まとめ|テールゲートリフターの特別教育で事故を撲滅する
テールゲートリフターは物流現場の効率を大きく向上させる便利な設備ですが、一歩間違えれば作業員の命を脅かす危険もはらんでいます。
そういった背景から、2024年2月より特別教育の実施が義務化されました。概要を以下にまとめます。
▼テールゲートリフターの特別教育概要まとめ
| 項目 | 内容・ポイント |
|---|---|
| 教育内容・記録 | 学科4時間、実技2時間の計6時間。実施記録には3年間の保存義務がある。 |
| 違反時の罰則 | 特別教育を実施せず作業させた場合、”6ヵ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金”の対象となる。 |
| 受講の方法 | ”社内実施”、”外部機関”、”講師招へい”の3種類。自社の規模や予算に合わせて選択が可能。 |
今回の義務化を単なる法令遵守のプロセスと捉えるのではなく、現場全体の安全意識をアップデートする絶好の機会と捉えてみるべきです。
動画マニュアルなどを活用すれば、効果的な安全教育を講じることができます。コンプライアンスを守りつつ、1人ひとりが安心して長く働ける現場を実現していきましょう。
>>動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を詳しく見てみる
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