物流現場のかんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を展開する、現場改善ラボ編集部です。
在庫管理の精度を高めるには、現場で使いやすい棚卸マニュアルの整備が不可欠です。しかし、マニュアルを作成してもすぐに形骸化し、実務に活かされていないケースも少なくありません。
本記事では、現場で活用される棚卸マニュアルを作成するコツを紹介します。効果的なマニュアル運用を行っている物流企業の事例も取り上げていますので、自社の在庫管理や棚卸作業を改善する際の参考にしてみてください。
目次
在庫管理における棚卸マニュアルの重要性
在庫管理を適切に行うためには、ミスのない正確な棚卸が欠かせません。棚卸とは「倉庫内の実在庫数を確認し、帳簿上の在庫数と照合する作業」であり、無駄のないコスト管理や適正在庫の維持に不可欠な取り組みです。
精度の高い棚卸を実施するうえで重要なのが、標準的な作業手順を明示した「棚卸マニュアル」の整備です。実務に即したマニュアルを作成し、現場全体で共有することで、誰が実施しても正しく棚卸が行われる体制を構築できます。
一方、棚卸マニュアルが整備されていない現場では、次のようなリスクが発生しやすくなります。
- 棚卸業務が属人化する
- 在庫数を把握できず、過剰発注/余剰在庫が発生する
- 棚卸作業の生産性低下につながる
- 在庫品質の悪化につながる
これらのリスクは業務効率の低下を招くだけでなく、コストの増大や販売機会の損失、顧客満足度の低下といった経営上の損失にも直結します。棚卸マニュアルを整備し、在庫管理の精度を高めることは、健全な企業経営を行ううえでも重要な取り組みといえるでしょう。
棚卸マニュアルに記載すべき項目例
棚卸マニュアルに盛り込むべき項目例を下表にまとめています。初めて作業する人でも迷わず実施できるよう、作業内容や手順を具体的かつ丁寧に記載することが大切です。
項目 | 詳細 |
---|---|
目的 | 棚卸を実施する目的(無駄な在庫コストの削減、会計処理の正確性確保など) |
対象物 | 棚卸の対象とする在庫(原材料、仕掛品、完成品、消耗品など) 必要に応じて除外品目も明示する |
実施時期・ 頻度 | 棚卸を実施する時期や頻度(月次、四半期、年次など) 急な棚卸が発生する場合の対応方法についても記載する |
準備物 | 棚卸作業に必要な備品・機器(棚卸表、ハンディターミナル、システムのログイン情報など) 機器の充電状態や通信環境の確認を前もって行うことも明記する |
棚卸手順 | 棚卸作業の具体的な流れ、在庫の検品方法、棚卸表の記入ルールなど ハンディターミナルや在庫管理システムを使用する場合は、各ツールの操作方法もまとめる (操作画面のキャプチャがあるとわかりやすい) |
確認・ 報告方法 | 数量確認の手順や帳簿との照合方法、報告書の書き方など 不一致があった場合の処理や報告フローについても記載する |
注意点 | 作業ミスを防ぐための注意事項 作業中の在庫移動や受注処理(在庫引き当て)、二重カウントなど、棚卸時に起こりがちなミスと未然防止の対応を記載する |
【形骸化を防ぐ】現場で活用される棚卸マニュアルを作成・整備するコツ
マニュアルは現場で活用されてこそ意味があるものです。形だけ整えた「読まれないマニュアル」にならないようにするには、実務に即した視点や工夫、内容の具体性を意識することが重要です。
特に棚卸作業は煩雑になりやすく、独自の運用ルールを定めている現場も多いため、誰でも共通の手順で対応できるマニュアルを整備しておく必要があります。ここでは、現場で使われるマニュアルを作るためのコツを紹介します。
- テンプレートを活用して統一感をもたせる
- “一目で理解できる”マニュアル作成を意識する
- 困った時・閲覧したいときにマニュアルにアクセスできる環境を構築する
- 現場で作業する従業員の目線で作成する
- 定期な更新を心がける
テンプレートを活用して統一感をもたせる
棚卸マニュアルを作成する上で、作業ごとに記載されている内容やフォーマットが異なると、読み手に負担を与えてしまい現場で使われないリスクが高まります。
このようなリスクを防止するためにも、フォーマットを統一したうえでマニュアルを作成することが重要です。以下では、棚卸作業のマニュアルにも使えるテンプレート、倉庫内作業のサンプルマニュアルを用意しています。

テンプレート・サンプルマニュアルは、「物流・倉庫作業のマニュアル作成ガイドブック(PDF資料)」でご用意しています。ガイドブック内では、テンプレート・サンプルに加えて、具体的な作成手順やマニュアルの整備に成功している企業の好事例なども記載しているので、以下のリンクをクリックしてご覧ください。
>>「【すぐに使える4種類のサンプル付き】 物流・倉庫作業のマニュアル作成ガイドブック」を見てみる
“一目で理解できる”マニュアル作成を意識する
現場で活用される棚卸マニュアルは、誰が見ても「一目で理解できる」構成になっています。
長文の説明よりも、図解やフローチャート、操作方法のキャプチャなど、視覚的に理解しやすい要素を盛り込みましょう。また、工程ごとの要点をチェックリスト形式で提示すると、ミスの早期発見や抜け漏れ防止にもつながります。
一目で理解できるマニュアルを作成する上では、「読み込ませる」よりも「直感的にわかる」ようにするのが非常に重要です。その点で注目されているのが、マニュアルの動画化です。実際の棚卸作業の手順を撮影し、動画のマニュアルにすることによって、スキルや経験年数を問わずに一目で作業内容を理解することができます。
以下は、物流現場で実際に活用されている「カゴ台車の取り扱い」に対しての動画マニュアルのサンプルです。
※tebiki現場教育で作成しています
このように動画の活用によって、マニュアルや手順書を整備している現場は徐々に増えてきています。動画マニュアルが物流現場の生産性の向上を後押しする理由について、企業事例などを用いてわかりやすく解説した資料もご用意しているので、あわせてご覧ください。
>>「物流業界の生産性向上を助ける動画マニュアルのチカラ(pdf資料)」を見てみる
困った時・閲覧したいときにマニュアルにアクセスできる環境を構築する
棚卸マニュアルの形骸化を防ぐには、現場ですぐに確認できる環境を整備しておくことが重要です。マニュアルにアクセスしやすい導線が確保されていれば、作業中に不明点が生じた際もその場で正しい手順やルールを確認し、誰でも迷いなく作業を進められるようになります。
例えば、テーブルマーク株式会社では、操作するエリアや機械の付近に、QRコードを設置し、タブレットやスマートフォンで読み込むことで、その場ですぐに作業手順やルールが動画マニュアルで確認できる環境を構築しています。
▼機械に貼られたQRコードを読み込み、動画マニュアルを確認する様子▼
QRコードを読み込み、動画マニュアルを確認する様子-1024x576.png)
同社は製造業なので業種こそ違うものの、物流現場でも参考にできる好事例です。マニュアルを“いつでも見られる”状態にすることで、判断ミスや作業のばらつきを防ぐとともに、棚卸マニュアルの実用性と在庫管理の精度を高めることができます。
物流業界における動画マニュアルの活用事例や活用イメージについて、より理解を深めたい方は、以下の資料「物流業界の生産性向上を助ける動画マニュアルのチカラ(pdf資料)」もあわせてご覧ください。
>>「物流業界の生産性向上を助ける動画マニュアルのチカラ(pdf資料)」を見てみる
現場で作業する従業員の目線で作成する
実務で活用されるマニュアル作りのポイントは、実際に現場で作業している従業員の視点に立って作成することです。
例えば、管理部門だけで作成する場合、作業の効率やスピードを重視するあまり、現場の実態と乖離した内容になることも少なくありません。棚卸マニュアルを作成する際は、現場で作業する担当者にヒアリングを行い、業務の実態に即した内容にすることが重要です。
また、作成したマニュアルは実際の棚卸業務においてテスト運用を行い、内容のわかりやすさや使い勝手の良さなどを担当者から評価してもらいましょう。本運用を始める前に、現場目線のフィードバックを反映させるプロセスを踏むことで、より実用的なマニュアルへとブラッシュアップできます。
定期な更新を心がける
棚卸マニュアルを作成した後も、定期的な見直し・更新を行うことが大切です。
自社で取り扱う商品やロケーションの変更、倉庫レイアウトやシステムの改変などが行われると、それに伴い棚卸作業の手順やルールも変わる場合があります。こうした変化に合わせて適切に更新しなければ、せっかく作成したマニュアルもすぐに形骸化してしまい、現場での作業ミスや混乱を招く原因となることに注意が必要です。
棚卸マニュアルを更新する際は、必ず変更履歴を明示し、新旧の違いが一目でわかるようにしておきましょう。また、マニュアルの更新を誰が担当するのか、どのタイミングで見直すのかといった運用ルールを設けることで、スムーズな更新体制を維持できます。
マニュアル/手順書作成がうまくいっている物流企業事例
マニュアル/手順書の作成を効率的に行えている企業事例として、「ソニテック株式会社」を紹介します。
新築戸建て住宅に使用される建築副資材を提供する事業を展開している同社では、マンツーマン指導で作業内容を正確に伝えることができずにミスが頻発したり、Excelで運用しているマニュアルが更新されずに形骸化するなどの課題を抱えていました。
そこで、直感的に理解できる伝達手段として動画に注目し、動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を導入。簡単に動画マニュアルが作成できる補助的な機能が充実しているため、パソコンが苦手な従業員でも5〜10分程度で作成することができています。
また、従来のマンツーマン教育から動画を活用した教育にシフトしたことによって、教育にかかる時間と人手の削減、教育品質の均一化などの様々なメリットがもたらされています。同社の事例を詳しく読んでみたい方は以下のインタビュー記事をご覧ください。
インタビュー記事:3ヶ月間の直接指導を動画マニュアルで完全に置き換え、業務の効率化を実現
棚卸マニュアルを効率的に作成できる「動画マニュアル」のすすめ
前章で紹介したソニテック株式会社のようにマニュアルは紙やExcelではなく、動画を活用して作成されるケースが増えており、動画の有効性が伺えます。
紙やExcelにはない、動画マニュアルならではのメリットは以下のようなものがあげられます。
- 動きや手順などを映像で伝えることができ、紙よりも情報を簡潔に伝えられる
- 作業風景を撮影し、かんたんな編集作業だけでマニュアルを作れる
- 自発的な学習を促進でき、OJTなどの教育工数削減につながる
仮にテキストベースで棚卸マニュアルを作成する場合、棚卸に必要な備品や機器の扱い方を説明し、実際の作業を手順通りに解説し、注意点を記載して…など、非常に手間がかかります。一方で、動画でマニュアルを作成すれば、一連の作業を撮影し、適宜口頭での補足説明を入れれば、簡易的ではありますが紙と比べて最小限の手間で作成可能です。
動画でのマニュアル作成を検討している方は、物流業界に特化した動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」のサービス資料をご覧ください。詳細な機能や活用事例等、動画マニュアルを導入するにあたって参考となる情報が詰め込まれています。下の画像をクリックするとダウンロードが可能です。
棚卸マニュアルがないと在庫管理はどうなる?考えられるリスク
棚卸マニュアルが整備されていない場合、在庫数のズレや作業ミスが発生しやすくなります。それが積み重なると、在庫管理の精度や棚卸作業の効率に支障が生じ、結果として業務の安定性や収益性にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
在庫数を把握できず、過剰発注/余剰在庫が発生する
棚卸マニュアルが存在しない、あるいは形骸化している場合、棚卸作業の手順やルールが曖昧になり、作業員ごとにやり方がばらつく可能性があります。その結果、倉庫内の実在庫数を正確に把握できず、帳簿との不一致が常態化してしまいます。
これにより、必要以上の数量を手配してしまう「過剰発注」や、需要を上回って滞留する「余剰在庫」が発生しやすくなり、管理コストの増加や在庫品質の劣化、納期遅延による顧客満足度の低下などのリスクが高まります。
棚卸し作業の生産性低下につながる
棚卸マニュアルが整備されていない現場では、統一された基準で作業を進めることが困難です。作業員によって異なる手順や方法で棚卸を行ってしまうと、記録漏れや二重カウント、誤計上などの作業ミスが増加し、在庫管理の品質を保つことができなくなります。
さらに、これらのミスを修正するための確認作業や手戻りも発生し、無駄な時間や労力が膨らんでいきます。こうした非効率な作業は棚卸全体の進行を遅らせ、作業員のパフォーマンス低下や生産性の悪化を招くリスクがあります。
マニュアル作成以外にできる在庫管理を効率化するポイント
在庫管理を効率化するためには、マニュアルの整備だけにとどまらず、管理手法そのものを改善していくことが求められます。ここでは、マニュアル作成以外にできる効率化のポイントを紹介します。
在庫管理の4原則を遵守する
正確かつ効率的な在庫管理を行うには、以下に挙げる4つの原則を遵守することが基本となります。
【在庫管理の4原則】
- 在庫の所在がすぐにわかる
- 在庫の数量がすぐにわかる
- 先入れ先出しができる
- アクションのポイントがわかる
どの商品がどこにあり、いくつ保管しているかがすぐに把握できる体制を整えることで、在庫管理の精度が向上し、誤出荷や欠品のリスクも軽減されます。
また、在庫の品質劣化や廃棄、滞留在庫を防ぐためには、先入れ先出しの仕組みを確実に実施することが重要です。さらに、在庫の需要予測や回転率などに基づき、在庫水準を適正に保つためのアクションポイント(特定の状況や数値に達したときに実行すべき対応策)を明確にしておくことも欠かせません。
ロケーション管理を徹底する
在庫の保管場所を明確にし、「どこに何があるか」をすぐに把握できる状態に整えておくことで、棚卸作業や日々の在庫管理の効率が大幅に向上します。ロケーション管理が曖昧だと、在庫の確認やピッキング作業に余計な時間がかかり、数量ミスや取り間違えなどのヒューマンエラーが起こりやすくなります。
現場によっては、空いているスペースに商品を保管していく「フリーロケーション」が適している場合もありますが、基本的には在庫のロケーションを設定し、商品ごとの所在を明確に決めておく管理方法がおすすめです。固定ロケーションは、管理のしやすさや作業の正確性においてメリットがあり、経験の少ない新人でもスムーズに作業を進めることができます。
ABC分析を行う
在庫管理におけるABC分析とは、商品の重要度に応じて「A・B・C」の3ランクに分類し、それぞれに適した管理方法を採用する手法です。
ランク | 分類する商品 |
---|---|
A(重要度大) | 売上や利益への影響が大きく、重点的に管理すべき商品 |
B(重要度中) | 安定した需要があり、定期的な管理が求められる商品 |
C(重要度小) | 売上や利益への影響が小さく、簡易な管理が適している商品 |
ABC分析を活用することで、限られたリソースを重要度の高い商品に集中させることができ、効率的かつ効果的な在庫管理が実現します。ただし、季節要因やキャンペーンなどで一時的に出荷量が増加する商品もあるため、全体分析とは別に、短期的な動向を踏まえた一過性の分析も行うなどの工夫が必要です。
先入れ先出しを徹底する
「先入れ先出し」は在庫管理の基本であり、先に入荷した商品から優先的に出荷する仕組みを指します。この運用を徹底することで、在庫の品質劣化や廃棄ロスを防止でき、安定した商品供給やコスト削減につなげられます。
しかし現場では、新しい在庫を奥に、古い在庫を手前に配置しなければならず、作業負担が増してしまいます。ロケーションによってはすべての在庫を一度取り出す必要があり、特に重量のある商品は体力的にも大きな負担となります。先入れ先出しを徹底するためには、現場全体に在庫管理の重要性を浸透させるとともに、ロケーションの見直しやツールの導入など作業負担を軽減する対策も求められるでしょう。
5S活動を徹底する
在庫管理を効率化するうえでは、5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底も欠かせません。5Sが徹底されていない現場では、出荷する商品をすぐに取り出せずに作業が滞ったり、汚れや破損によって商品が出荷できなくなったりと、在庫管理の効率や品質が大きく低下してしまいます。
こうした状況を防ぐためには、現場全体で5Sの各項目に取り組み、作業しやすい環境を常に維持することが重要です。5S活動の基本的な概念や具体的なアクションに関しての理解を深めたい方は、数々の企業で5S改革を行ってきた専門家による解説動画をご覧ください。下の画像をクリックすると動画をご覧頂けます。
まとめ:正しい在庫管理には現場で活用される棚卸マニュアルが不可欠
棚卸マニュアルが整備されていない現場では、過剰発注や余剰在庫、棚卸作業の非効率化などが起こりやすく、在庫管理の精度が大きく損なわれます。こうした課題を解消するには、実務に即した視点や工夫を取り入れ、現場で機能する実用的なマニュアルを整備する必要があります。
特に動画マニュアルは、作業の流れを直感的に理解しやすく、教育内容の標準化にも大きく貢献するツールです。物流現場向けの動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」は編集も簡単で、実用性の高い棚卸マニュアルを誰でも簡単に作成できます。在庫管理の精度が落ちている、棚卸作業が属人化しているなどの課題を感じている場合は、動画マニュアルの導入を検討してみてはいかがでしょうか。