フォークリフトは製造・物流現場作業において欠かせないものである一方、起因した火災事故を発生させてしまう危険性もあります。
フォークリフト単独での火災事故の件数は統計が取られていないものの、厚生労働省の「労働災害統計」のデータでは毎年2,000件前後のフォークリフトに関連した死傷災害が発生しています。
このうち30名前後が毎年死亡しており、フォークリフトによる重大な労働災害を防ぐための原因と対策を把握することが、とても重要となります。
関連記事:フォークリフト事故・労災の実態:事例や発生件数・原因について
この記事では、フォークリフトによる火災事例と原因、現場でできる事故防止策について解説します。
目次
実際にあったフォークリフトの火災事故3つの事例
フォークリフトによる火災事故は、倉庫や物流現場、工場などで実際に発生しています。
事故の多くは突然起きるわけではなく、整備不足・作業環境・危険物管理の不備など複数の要因が重なって発生する労働災害です。事故を未然に防止するために、まずは管理者や現場作業員が「どのような状況で火災が発生したのか」を具体的に理解することが重要です。
挟まれや巻き込まれなどの事故とは異なり、火災事故の原因にはフォークリフトの駆動式の違いによる特徴がありますので、ここでは種類ごとの火災事例を紹介します。
エンジン式フォークリフト(内燃機関)での火災事例
エンジン式フォークリフトはガソリンや軽油、LPガスなどの燃料を使用して運転するため、燃料系統や高温部が原因となる火災事故が発生することがあります。特に倉庫や物流センターでは段ボールやパレットなど可燃物が多いため、火災が拡大しやすい環境です。
厚生労働省の「職場のあんぜんサイト(労働災害事例データベース)」では、フォークリフト作業に関連する事故の多くが整備不足や作業環境の不備に起因していることが指摘されています。
エンジン式フォークリフトの火災リスクが高まる主な状況は次のとおりです。
- 高温になった排気管に段ボールや紙くずが接触する
- 燃料ホースの劣化による油漏れ
- 電気系統のショート
- 整備不足のまま作業を続ける
これらの要因は、現場の設備管理や安全管理が不十分な場合に発生しやすいとされています。
例えば物流倉庫では、2017年に提携業者の作業員がフォークリフトを運転している際に高温の排気管付近にダンボールが挟み込まれ、着火したケースがあります。この被害は非常に大きく、提携会社に対して約51億円の賠償請求がされた事例があります。
引用:アスクル物流センター火災で古紙回収業者に約51億円の賠償命令|企業法務ナビ
この事例から分かるように、エンジン式フォークリフトの火災は高温部と可燃物の接触が大きな要因です。倉庫内の清掃や整備を定期的に実施し、可燃物を放置しない管理体制が重要です。
バッテリー式フォークリフト(電動式)での火災事例
電動フォークリフトは排気ガスが出ないため倉庫や物流施設で広く活用されています。しかし、バッテリーや充電設備に問題がある場合、火災や爆発の危険性があります。
厚生労働省や労働安全関係機関では、電動フォークリフトのバッテリー管理について次のようなリスクが指摘されています。
- 充電設備の不具合
- 配線の短絡(ショート)
- バッテリーの過充電
- 電解液の漏れ
- 整備不足
電動フォークリフトは大容量バッテリーを使用するため、充電中に発生する熱やガスが火災の要因となることがあります。
2014年に愛知県にある倉庫で火災が発生したのですが、出火原因はフォークリフトを充電するコンセントやケーブル付近から漏電しており、トラッキング現象が発生したと考えられています。
引用:出火から45時間、ようやく鎮火 愛知・蟹江の倉庫火災|環境ワークス
燃料電池フォークリフト(FCV)
近年、物流業界では水素エネルギーを活用した燃料電池式フォークリフト(FCフォークリフト)の導入が進んでおり、政府も2030年に燃料電池式フォークリフトを1万台普及させる目標を掲げています。
環境負荷が少ないため注目されていますが、水素ガスを使用するため特有の火災リスクがあります。
燃料電池フォークリフトで想定される主な火災要因は次のとおりです。
- 水素ガス漏れ
- 配管や容器の損傷
- 電気系統の短絡
- 周辺設備の不備
水素は非常に軽く拡散しやすいガスですが、密閉空間で漏れた場合は引火する危険性があります。そのため水素設備を使用する現場では、厳格な安全管理が必要です。
2019年、神奈川県で燃料電池式フォークリフトに水素を充塡中大きな音とともにホースが破損した事故が発生した事例があります。この事例では火災事故にまでは至りませんでしたが、一歩間違えると爆発も伴う非常に重大な火災事故に発展してしまいます。
フォークリフトの火災事故は、それぞれの駆動式によって原因やリスクが異なります。しかし共通して言えるのは、事故の多くが設備管理や安全対策の不足などによって発生しているという点です。現場の状況を正しく把握し、リスクを理解することが事故防止の第一歩です。
フォークリフトの火災発生につながる主な原因
フォークリフトの火災事故は突然発生するものではありません。多くの場合、機械の整備不足、作業環境の不備、電気系統のトラブルなど複数の原因が重なって発生します。
電気系統のトラブル(配線の短絡・ショート)
フォークリフトはバッテリーや配線など多くの電気部品を使用しています。配線の劣化、絶縁破損、整備不足などによって電流が異常に流れると発熱し、周囲の可燃物に引火する可能性があります。これはエンジン式・電動式・燃料電池式のすべてに共通する火災原因です。
可燃物・危険物との接触(作業環境の管理不足)
倉庫や物流現場では段ボール、木製パレット、梱包材など可燃物が多く存在します。フォークリフトの高温部や電気部品、火花などがこれらに接触すると火災が発生する可能性があります。現場の整理整頓や危険物管理が不十分な場合、火災リスクが高まります。
エンジン駆動式の排気管付近への可燃物の接触、バッテリー式の電源付近へのほこりの付着などが主に該当します。
設備の整備不足・点検不足
フォークリフトは機械設備であるため、定期的な整備や点検が不可欠です。燃料漏れ、バッテリー異常、配線損傷などを放置したまま作業を続けると、発熱や引火による火災事故につながる可能性があります。
必要な点検項目を網羅したマニュアルや作業手順書を作成し、作業者や管理者全員が適切な設備管理と定期点検を実施することが事故防止の重要なポイントです。
フォークリフトの火災事故を未然防止する3つの具体策
フォークリフトの火災事故は、突然発生するものではなく、多くの場合「管理不足」「作業環境」「安全教育」の3つの問題が重なって発生します。したがって事故防止には、設備管理・作業環境の整備・安全教育の徹底という3つの対策を同時に実施することが重要です。
つまり、火災事故を防ぐためには単に注意するだけでは不十分であり、現場の安全管理体制を整えることが必要です。ここではフォークリフト火災を防止するために重要な3つの具体策を解説します。
定期的な点検・整備による設備管理の徹底
フォークリフトの火災事故を防ぐために最も重要なのは、機械設備の定期点検と整備を徹底することです。フォークリフトはエンジン、電気系統、燃料系統、バッテリーなど多くの機械部品で構成されています。これらの設備が劣化したまま使用されると、発熱や漏れが発生し火災につながる可能性があります。
設備管理で確認すべき主な項目は、次のとおりです。
点検項目
- エンジン周辺の油漏れ
- 燃料配管の状態
- 電気配線の損傷
- バッテリーの状態
- 充電設備の確認
- 排気管周辺の異常
フォークリフトは日常的に荷物の運搬作業で使用されるため、振動や衝撃によって部品が劣化しやすい機械です。
日々の点検や定期点検を実施し、整備記録を管理することで、事故の発生を未然に防止することができます。
筆者の私自身の例としては、バッテリー型フォークリフトの充電時に配線を無理に曲げたり引っ張ることが無いよう、コンセントと車体を適切な距離で充電するように注意をしていました。
また、配線が地面になるべくつかないよう、適切な高さに配線のフックが設置してあり、床のほこりによるトラッキング現象を起こさないように努めました。
危険物・可燃物を遠ざける作業環境の整備
フォークリフト火災を防止するうえで、作業環境の整備も非常に重要な対策です。
倉庫や物流施設では、段ボールや木製パレットなどの可燃物が大量に存在します。フォークリフトの排気管や電気部品から発生した熱や火花がこれらに接触すると、火災につながる可能性があります。
特に次のような状況は危険です。
・段ボールや紙くずが床に散乱している
・パレットが機械の近くに積まれている
・危険物が通路付近に置かれている
・通路が狭く走行スペースが確保されていない
現場では作業効率を優先してしまい、整理整頓が不十分になることがあります。しかし、作業環境が悪い状態は火災事故の大きな原因になります。
例えば倉庫では、段ボール片がフォークリフトの下部に入り込み、排気管付近で煙が発生した事例があります。作業員が異臭に気付きすぐに対応したため大きな災害にはなりませんでしたが、状況によっては倉庫全体に延焼する危険がありました。
安全な作業環境を維持するためには、次の対策が重要です。
作業環境改善のポイント
- 通路の確保
- 危険物の適切な保管
- 定期的な清掃
- 不要な荷物の整理
- 作業区域の区分
これらの対策を実施することで、フォークリフトと可燃物の接触を防ぎ、火災事故の発生を防ぐことができます。
私が従事した現場では5Sが徹底されており、紙類の付着による発火がないように作業者が意識を持って従事していました。
安全教育とKYTによる事故予知活動の実施
フォークリフトによる火災事故の多くは、設備だけでなく作業者の行動や判断ミスによって発生するケースもあります。そのため、安全教育の実施と危険予知活動(KYT)は非常に重要です。
KYTとは「危険予知トレーニング」のことであり、作業前に現場の危険を確認し、事故を未然に防止する活動のことです。フォークリフトに関連するKYTは、次の記事を参考にしていただければと思います。
関連記事:リーチフォークリフト安全対策:危険予知のやり方や事故事例・注意点
上記記事はフォークリフト全般でのKYTですが、特に火災事故に関連するKYTには次のようなものが考えられます。
- 電気配線の損傷による短絡(ショート)
- コンセントやコネクタへの付近の清掃不足による、トラッキング現象の発生
- エンジン付近への紙屑の付着による着火
- 燃料ガス漏れによる引火や爆発
フォークリフトの火災事故は、設備・環境・人の3つの要素が重なって発生します。定期点検、作業環境の整備、KYTを含めた安全教育を継続的に実施することで、事故の多くは未然防止することが可能です。
私の経験を踏まえると、KYTは複数の作業者と共同で行うことで、私自身では気が付かなかったリスクを事前に把握でき、事故の防止に繋げることができたと感じております。
他の作業者と共にKYTを行うことで、全員の安全意識を高めてリスクの把握や事故の防止効果を高めることができます。
安全ルールが形骸化する要因と現場教育のヒント
安全ルールやマニュアルは設けていても、形骸化して機能していなければ本来の目的を果たせず事故に繋がってしまいます。形骸化の主な理由とそのリスクを解説し、効果の高い改善策としての動画マニュアルによる「安全手順の標準化」について紹介します。
ベテランの「勘とコツ」に頼るリスク
形骸化の代表的な理由として、ベテランの「勘とコツ」に頼っているというものが挙げられます。長く現場で働いている作業者ほど、つい自分の経験や暗黙のルールで作業をしてしまう傾向があります。
言語化や数値化しづらい作業は特にベテランの勘や経験に頼ってしまいやすくなります。しかし新人はその判断基準を理解できないため、危険な作業が引き継がれることがあります。
また、勘や経験による指導は作業者によって判断基準のバラつきも発生しやすく、新人作業員は指導の統一性のなさから混乱し、技術や知識の習得に遅れが出てしまいます。
動画マニュアルによる「安全手順の標準化」
文章のみのマニュアルでは、読まれない・視覚化されていないのでイメージしづらい・外国人作業員に伝わりづらいという要素から、なかなか現場作業員への落とし込みがしづらいのが現場です。ただ、人員不足などの影響から新たなマニュアル作成の時間が取れず、結局ベテラン作業員から勘とコツを伝授することに頼ってしまっている現場もあるかと思います。
そのような懸念点の解決策として、以下の5つの理由から動画マニュアルの作成ツールを活用していただくことが非常に有効です。
1. 作業手順を全員で同じ基準にできる
文章のマニュアルだけでは、作業者ごとに理解が異なることがあります。
しかし動画マニュアルであれば
- フォークリフトの操作方法
- 点検のやり方
- 危険な作業の例
を映像で具体的に共有できるため、全員が同じ手順を理解しやすくなります。
その結果、ベテランの勘や経験に頼る作業を減らし、安全ルールの統一につながります。
2. 危険な作業や火災リスクを視覚的に理解できる
フォークリフトの火災原因は
- 燃料漏れ
- 電気系統のショート
- 可燃物への接触
などさまざまです。
動画マニュアルでは
- 危険な作業例
- 実際の事故ケース
- 正しい作業手順
を映像で示すことができるため、作業者が危険を直感的に理解しやすくなります。
3. 新人教育の質を均一化できる
現場では新人教育がベテラン作業者に任されることが多く、教え方に差が出ることがあります。
動画マニュアルを活用すれば
- 誰が教えても同じ内容、同じ手順、同じ安全ルール
- 外国人作業員の方にも伝わりやすい
このようなメリットがあります。
そのため、教育のばらつきを減らし、安全レベルを一定に保つことができます。
4. いつでも繰り返し学習できる
紙のマニュアルは一度読んだだけで終わることが多いですが、動画マニュアルは
- スマートフォン
- タブレット
- PC
などでいつでも確認できます。
そのため
- 作業前の確認
- 定期的な安全教育
- KYT(危険予知活動)
などに活用でき、安全意識の維持につながります。
5. ヒヤリハットや事故情報を共有しやすい
動画は事故やヒヤリハットの状況を分かりやすく伝えることができます。
例えば
- 危険な走行方法
- 荷物の落下
- 可燃物への接触
などを再現することで、現場全体で危険を共有することができます。
まとめ
動画マニュアルによる安全手順の標準化には、次のメリットがあります。
・作業手順を全員で統一できる
・災害リスクや危険行動を視覚的に理解できる
・新人教育の質を均一化できる
・繰り返し学習が可能になる
・ヒヤリハットや事故を共有しやすい
このように、動画マニュアルを活用することで、フォークリフト作業の安全教育を強化・統一化し、火災事故の未然防止につなげることができます。
tebikiの動画活用方法や事例についてご興味がある方は、以下のリンクからご覧いただくことができます。











