現場改善ラボ 記事一覧 お役立ち情報 旋盤作業の事故・ヒヤリハットを解説!事故を防ぐ具体的な対策も

工場向け安全対策の動画マニュアル「tebiki現場教育」を展開する、現場改善ラボ編集部です。

旋盤作業は熟練者であっても一瞬の判断ミスが重大な労働災害に直結しやすい危険な作業です。NC旋盤など自動化が進んだ現場でも危険は消えていません。そこで大切なのが、個々の注意ではなく仕組みで事故を防ぐ体制づくりです。

本記事では実際に工場の勤務経験がある筆者の観点も踏まえ、旋盤で起こりやすい事故やヒヤリハット、現場で実践できる安全対策の他、再発防止に必要な「標準化・技術伝承・可視化」の3つの原則を解説します。

なお昨今、「安全な作業手順を動画マニュアルで見える化し、標準化を進める」現場が増えており、工場における主要な安全対策として広く浸透し始めています。詳しい改善効果や事例は「動画マニュアルを活用した安全教育・対策事例(pdf)」をご覧ください。

労災が起きてからでは遅いので、ヒヤリハットで済んでいる現状のうちに安全対策を練ることが鍵を握ります。

>>「動画マニュアルを活用した安全教育・対策事例(pdf)」を見てみる

旋盤事故はなぜ起こるのか?3つの要因

旋盤事故は、以下3つの要因が重なることで発生しやすくなります。

  • 要因①モノ:設備・機械の不安全状態
  • 要因②ヒト:作業者の不安全行動
  • 要因③シクミ:管理・教育の不備

具体的に事故と要因①〜③の関係を次の表にまとめてみました。

事故の内容(例)主な発生要因想定される労災
①モノ:設備・機械の不安全状態・切削片や部品、工具が飛ぶ
・刃物や回転体へ直接触れる
・固定不良
・過度な回転速度
・摩耗工具の使用
・防護カバーの未装着
・停止の確認不足
・眼や顔面への衝突、失明、顔面裂傷
・切創、裂傷、深部損傷
②ヒト:作業者の不安全行動・手や腕、衣服が回転体に吸い込まれる
・治具や加工物との挟まれ
・高温切粉や摩擦熱に接触
・長袖や手袋の着用
・体を近づける
・無理な姿勢や位置誤認
・手作業での切粉除去
・工具の未使用
・指や腕の切断、骨折、巻き込み
・挟まれ、骨折
・皮膚の熱傷、火傷痕
③シクミ:管理・教育の不備・修理/点検中の感電・ロックアウトの未実施
・通電状態での作業
・危険ポイントの未共有
・感電ショック、心停止の危険

上の表を見ると、旋盤事故の原因には共通の要因が潜んでいることが多いといえます。

例えば「手・腕・衣服が回転体に吸い込まれる」事例では、長袖や手袋の着用、近接姿勢といった行動が原因のため「②ヒト:不安全行動」に分類できます。危険部へ近づく作業方法そのものが、重大災害を招く構造です。

また「切削片・部品・工具が飛ぶ」「刃物・回転体へ直接触れる」事例は、固定不良、防護カバー未使用、摩耗工具などが要因となり「①モノ:設備・機械の不安全状態」に該当します。設備対策や点検が不十分なまま稼働している状況です。

さらに「修理・点検中の感電」は、ロックアウト未実施、通電状態作業、手順不共有により「③シクミ:管理・教育の不備」に分類されます。ルール不在により、同種労災が繰り返されるリスクがあります。

以上から、旋盤事故は「設備の危険」「不安全行動」「管理・教育不足」の3要素が重なった時に発生しやすいと整理できます。

そのためどの要因に紐づくかを押さえてから、労災防止・再発防止につなげる必要があります。作業者の注意力といった個人の原因だけを責めるのではなく、あくまでも「発生要因を取り除くための仕組み」との両軸で対策するとよいでしょう。

※何度注意をしても不安全行動が繰り返されるような場合は、根本的な原因にアプローチする必要があります。対策について行動科学の観点で解説している資料「繰り返される不安全行動  行動科学から編み出す決定的防止網」もあわせてご覧ください。

旋盤で起こりがちな怪我・労働災害

旋盤作業で起こりがちな怪我や労働災害を5つご紹介します。

ここではさらに深掘りして、原因やメカニズムも解説します。

手指の切断・挟まれ

旋盤作業で特に多い労働災害が、手指の切断や挟まれです。特に、チャックや工具へ接近する作業では一瞬の接触でも深刻な損傷につながります。詳細を以下の表にまとめました。

労災の例・指や手の切断、挟まれ、骨折
・回転体への巻き込み
・深部損傷/裂傷
原因・背景・回転体への不用意な接近
・軍手や長袖の着用による巻き込みリスク
・治具固定時や測定時の姿勢不良
・停止確認不足/回転中の調整作業
・慣れによる禁止行動の常態化
対策・接近禁止距離を明示する
・接触禁止タイミングをルール化する
・固定確認手順を標準化する
・属人化に依存しない作業基準を構築する

対策としては、作業標準に「接近禁止距離」「接触禁止タイミング」「固定確認手順」を明文化し、安全ルールを統一することです。併せて、動画によるヒヤリハットの共有や教育で、禁止行動の再現性を高めることも効果的です。

災害は個人の注意ではなく、接近が発生しにくい標準化と教育の仕組み作りで防止できるといえるでしょう。

※現場で発生したヒヤリハットの事例・対策集については、以下の資料内で詳しく解説しています。是非お役立てください。

>>イラストでわかりやすい!報告から教育まで行えるヒヤリハット事例・対策集を見る

顔面・頭部への飛散物衝突

旋盤事故の中でも、飛散による顔面・頭部の負傷は失明や深刻な後遺障害を招く危険性があります。

労災の例・切削片や治具、部品の飛散による顔面/頭部負傷
・眼球損傷や失明
・顔面裂傷や骨折
・永久的な後遺障害
原因・背景・加工物や治具の固定不良
・摩耗した工具の継続使用
・過度な回転速度や切込み量設定の誤り
・防護カバー未使用/点検不足
・「一度できたから大丈夫」という経験依存
・設備安全対策の未実施や基準未整備
対策・固定トルクや工具寿命、回転数の数値基準化
・点検基準/交換基準の明文化と記録化
・防護カバーの常時使用と未使用時の排除ルール
・事故事例やヒヤリハットの共有と教材化
・感覚判断を排除できる標準作業手順書(SOP)の整備

対策として、固定トルク・工具寿命・適正回転数を数値基準で管理し、感覚や経験での判断を排除しましょう。併せて、防護カバーの常時使用、点検基準の明文化などがあります。

また「こうした事故があった」という事例の共有も作業員に命の危険を意識させられ、効果的です。飛散災害は「たまたま起こる」ものではなく、計測値と手順の管理不足で繰り返し発生しうるものだと認識する必要があります。

なお、作業員の不注意や安全意識の低下による「ヒューマンエラー」は、単なる注意喚起や直接指導ではなかなかゼロにできません。

ヒューマンエラーが根本的に生じない「仕組み作り」が重要ですが、その本質的な安全教育について解説された資料「ヒューマンエラーによる労災を未然防止する安全教育」も併せて参考にすると、安全対策の具体的なヒントが得られると思います。

上肢・衣服の巻き込み

巻き込み事故は旋盤作業において、切断・骨折・死亡に至る可能性があります。

労災の例・手指や腕の巻き込みによる切断、裂傷、骨折
・衣服や手袋ごとの巻き込み事故
・全身巻き込みによる重度障害や死亡
原因・背景・軍手や長袖、タオルやアクセサリー着用による繊維系巻き込み
・体勢を回転部に近づける作業習慣や癖
・回転中の測定や位置調整、清掃など禁止行動の常態化
・危険距離基準が曖昧で「無意識の接近」が発生
・服装や姿勢、距離ルールが明文化されず属人的判断に依存している
対策・服装ルールを「禁止」ではなく「仕様基準」として明文化
例:繊維手袋禁止/袖口密閉/指輪やネックレス禁止
・危険距離を数値基準化(例:回転体30cm以内接近禁止)
・図示や掲示、動画教材で視覚的に周知し、OJT依存を排除
・回転中作業の絶対禁止と測定/清掃の停止手順を標準化

そのため、服装ルールは「禁止ではなく仕様基準」として明文化し、繊維系手袋禁止・袖口の密閉・アクセサリー非着用をルール化しましょう。さらに危険領域を曖昧にせず、回転体から30cm以内接近禁止の距離基準を図示・掲示し、マニュアルでも反復周知する体制が必要です。

※以下の資料では、現場ルールや手順書に基づいた標準作業を守らせるポイントについて解説しています。

>>「“手順書通りにできない”から卒業!作業ルールを守らせる効果的な方法」を見る

目・皮膚の火傷

旋盤では高温切粉や摩擦熱により、皮膚の火傷や角膜損傷が発生します。切粉の飛散は予測しづらく、視線の向きや立ち位置の違いで危険性が変動します。

労災の例・皮膚の火傷や熱傷、水膨れ
・角膜損傷や失明リスク
・熱残留部品への接触による深部損傷
原因・背景・赤熱状態で排出される切粉への接触や飛散
・切粉除去を手作業で行う誤った慣習
・防護具(手袋や眼防護)の誤使用、過信
・加工後部品の熱残留を理解せず素手で触れる
・切粉飛散方向が作業姿勢や位置で変動し、予測困難
対策・切粉除去は「工具使用」を標準手順化し、手作業を禁止
・保護具の使い分け明確化(保護メガネ/フェイスシールド/耐熱手袋)
・教育で熱残留の理解と危険体験共有(動画や事例活用)
・加工後部品の「冷却確認手順」を手順書へ明文化

対策は、切粉除去方法を「工具を使用する作業手順」として標準化し、教育によって実際の熱状態を作業員に理解させることです。加えて、防護具については保護メガネ・フェイスシールド・耐熱手袋の使い分けを明確に示し、作業内容と防護具選定をセットで記載します。

また、加工後の部品は「冷却確認手順」を必須化します。火傷は軽傷に見えて後遺リスクが高く、除去方法と防護具のルールを教育することが重要です。

※以下の資料では、危険作業における安全対策の新しい教育アプローチについて解説しています。

>>「工場の労災ゼロを実現する、安全教育の新常識」を見る

感電・爆発などの二次災害

旋盤作業では電装部や冷却液・切削油の扱いにより、感電や引火といった二次災害も想定されます。特に、NC旋盤では電気設備や制御装置に触れる機会が多く、保全や復旧作業時に通電状態のまま介入するケースが目立ちます。

労災の例・感電ショック/心停止
・制御盤接触による電撃傷
・切削油ミストの引火や爆燃
・火災や設備損壊、周囲巻き込み
原因・背景・電気設備保全時に通電状態のまま介入
・ロックアウトや絶縁確認が未実施
・停電操作の手順曖昧/記録不備
・切削油の管理不良によるミスト化、引火性増加
・火花作業との併設判断が感覚依存
対策・電装や保全作業は標準化手順に従い実施
・電源遮断や絶縁確認、L/OとT/Oを必須化し教育
・停電操作は「実施者+記録者」の二重確認方式
・切削油の保全基準(交換周期や濃度、温度)を明文化
・火花作業と併設時は事前リスク評価を義務化

対策は、点検・保全手順を標準化し、絶縁確認・電源遮断・ロックアウトタグアウトを教育で必須化することです。併せて、停電操作の確認者と記録者を分ける「二重確認方式」も効果的です。さらに、切削油の保全基準や火花作業との併設判断基準も明文化します。二次災害は予測困難なため、設備作業は技量や注意ではなく仕組みで防ぐべきです。

※以下の資料では、危険作業における安全対策の新しい教育アプローチについて解説しています。

>>「工場の労災ゼロを実現する、安全教育の新常識」を見る

実際に発生した旋盤のヒヤリハットと事故事例

実際に発生したヒヤリハット事例と死亡事故をもとに背景や要因、再発防止策を整理します。

  • 【ヒヤリハット】NC正面旋盤の数値入力ミスで工物が外れ飛散
  • 【ヒヤリハット】修理中の機械に触れて感電
  • 【死亡事故】CNC旋盤に巻き込まれた
  • 【死亡事故】樹脂製品を旋盤加工中にはさまれた

このような事故は、安全を守る仕組み作りを怠るといかに作業者に危険が及ぶかをわかりやすく示しているといえます。


ゼロ災達成に向けた具体的な取り組みや安全教育について知りたい方は、以下のリンクから別紙のガイドブックをご覧ください。

>>工場の労災ゼロを実現する、安全教育や安全対策の具体例を見る

【ヒヤリハット】NC正面旋盤の数値入力ミスで工物が外れ飛散した

数値入力ミスによりNC旋盤の加工条件が誤ったまま作動し、切削工具が加工物へ衝突して外れ飛散した事例です。*1

ヒヤリハット数値入力ミスにより工具が加工物へ衝突し高速飛散した
原因・座標入力の読み合わせ未実施
・前回設定の流用
・チャッキング固定幅不足
・確認手順の不徹底
対策・入力値のダブルチェック義務化
・固定基準値の数値化と見える化
・作業前点検表運用
・入力ミス検知や停止機能の活用

NC正面旋盤は自動制御であっても「入力ミス」や「固定不良」が重なると重大事故へつながります。本事例でもプログラム誤入力が原因となり、加工物が飛散して作業者へ衝突しました。

数値入力がわずかに誤るだけで異常切削や工具衝突が発生し、外れ・飛散リスクが急上昇します。また、固定が不十分な状態で回転力が加わるとチャッキング保持力を超えて部品が放出され、致命的な衝撃につながります。

被災者は内径切削時、本来300mm入力すべきを誤って500mmで作動させ、工具が強制衝突。高速回転中の重量約340kgのワークが外れ防護カバーへ激突、破損したカバー片が頭部と腕へ当たり負傷しました。死亡は免れたものの、「入力ミス × 固定不良 × 手順未整備」が同時に起きた非常に危険な事例です。

NC旋盤では、人的要因と設備要因が同時に起こると重大事故に直結します。自動化設備こそ、手順の標準化と二重チェックが不可欠です。

※以下の資料では、現場ルールや手順書に基づいた標準作業を守らせるポイントについて解説しています。

>>「“手順書通りにできない”から卒業!作業ルールを守らせる効果的な方法」を見る

【ヒヤリハット】修理中の機械に触れて感電した

故障中の旋盤を修理中に、電源オフと誤認して触れて感電した事例*2です。「電源遮断を行わず作業が進められたこと」と「利用者側の認識不足」が重なり、修理中にも関わらず機械へ接触して感電が発生しています。修理作業中は必ず電源遮断と立入禁止を徹底し、関係者の認識を揃える必要があります。

ヒヤリハット修理中の機械へ作業者が誤って触れて感電
原因・電源遮断不足危険認識の欠如
・教育不足
・作業手順の曖昧さ
対策・ロックアウトやタグアウト導入
・教育強化
・修理表示の明確化
・現場ルール標準化

新人作業者が担当する旋盤に不具合が起き、保全担当者が修理対応を行いましたが、原因調査中にも機械が再度停止し、電源を完全に落とさないまま修理が続けられました。その後、修理担当者が不在の状態となり、作業者は表示灯が消えていることを理由に「電源は来ていない」と誤認し、リミットスイッチへ触れて感電しました。

背景に電源遮断の未徹底・教育不足・安全手順未整備・修理表示の不十分さが顕在化した事例といえるでしょう。

設備修理は「電源を切る・鍵をかける・離れる時は明確な封鎖」を徹底し、教育と標準化で認識の差異を無くすことが最も重要です。

【死亡事故】CNC旋盤に巻き込まれた

CNC施盤の回転中にサンドペーパーを直接当てたことで、作業者が巻き込まれ死亡したケースです。*3

ヒヤリハット数値入力ミスにより工具が加工物へ衝突し高速飛散した
原因・座標入力の読み合わせ未実施
・前回設定の流用
・チャッキング固定幅不足
・確認手順の不徹底
対策・入力値のダブルチェック義務化
・固定基準値の数値化と見える化
・作業前点検表運用
・入力ミス検知や停止機能の活用

本事例では加工誤差を補正するために回転状態のまま研磨し、軍手を着用した手にサンドペーパーを持って当てた結果、軍手が引っかかり強制的に巻き込まれました。また、作業手順書が未整備で禁止行動が会社として明示されておらず、教育・安全衛生管理も機能していませんでした。

こうした状況が「危険作業を危険と認識できない環境」を生み、死亡事故という悲惨な結果を引き起こしています。

結論として、回転中の加工物へ手を近づける作業は禁止し、工具や治具を使用した安全な研磨方法へ変更する必要があります。CNC施盤は高回転で強い引き込み力が働き、一度接触すると脱出できず、致命的事故に直結するためです。

管理者が取れる対策としては「作業を止める・触れない・固定する」という原則の明文化や安全な治具による研磨方法への切り替え、禁止事項の可視化、教育訓練と管理体制の整備などが挙げられます。

【死亡事故】樹脂製品を旋盤加工中にはさまれた

自動制御旋盤の運転中に加工物を拾おうとして挟まれたケースです。*4

ヒヤリハット自動運転中に内部へ手を入れ挟まれ死亡
原因・インターロック未装備
・落下対応ルール未整備
・手順書不在
・教育不足
対策・立入禁止ルールを明文化
・インターロック導入
・非常停止の位置を改善
・異常対応に関する教育の標準化

本件では樹脂製品を手で受け取る運用が続き、落下品への対応ルールもなく、作業者が身をかがめて旋盤内部へ手を伸ばしました。さらに柵のインターロックが未装備であり、非常停止ボタンも手が届く位置に無く、作業者の判断に依存した不安全行動が許容される状態でした。安全装置の未整備、作業手順の不存在、教育不足の3点がそろい、死亡事故に至ったといえます。

「自動運転=安全」ではありません。立入防止とインターロックが不十分な環境では労働災害が起こり得ることが事例からわかります。

必要な改善策は、インターロック導入・拾い上げ禁止ルールの明文化・作業手順書の作成・異常対応教育の標準化です。自動化ラインでも設備安全・ルール・教育の三点が揃わなければ事故は防げません。

※以下の資料では、現場ルールや手順書に基づいた標準作業を守らせるポイントについて解説しています。

>>「“手順書通りにできない”から卒業!作業ルールを守らせる効果的な方法」を見る

NC旋盤なら事故を防げる?自動運転に潜む事故リスク

NC旋盤は自動化により精度と生産性を高めることが出来ますが、誤操作や安全装置の無効化が原因で労働災害につながる危険があります。前節の「【死亡事故】樹脂製品を旋盤加工中にはさまれた」でも「自動運転=安全」ではないことに触れましたが、ここでは自動運転に潜むリスクについてさらに深掘りしていきます。

  • 安全装置の無効化による事故やケガ
  • プログラム入力ミスによる暴走・飛散事故
  • 異常検知の見落としと反応の遅れ

安全装置の無効化による事故やケガ

「危険に近づく前に機械側が止める」のが安全装置であり、設備と作業手順は、その安全装置が有効であることを大前提として設計されています。

しかし、現場で安全装置を「邪魔」「効率低下の原因」と捉えて無効化した瞬間、その設計上の大前提が崩壊します。設備は本来想定された安全な制御から外れ、作業者は剥き出しの高速回転部品や高エネルギーの加工点といった「想定外の危険」に直接さらされる事態になりかねません。

安全装置の無効化は、このように設計者が意図した安全の枠組みを無にする行為であり、労働災害の直接的な引き金となります。だからこそ、例外を認めない厳格な管理基準が必要です。したがって、安全装置の無効化は「現場判断」ではなく「重大な規律違反」と位置付け、点検・監査・教育を含む仕組みで再発を防ぐ必要があります。

実際に放電加工の現場に従事していた筆者も、過去に安全装置を無効にした結果、加工中の電極とワーク(加工部品)の隙間に指を挟まれ、出血し危うく指を失いかけた経験があります。

プログラム入力ミスによる暴走・飛散事故

NC旋盤は入力された数値を基準に自動制御で動作するため、わずかな誤入力でもそのまま誤指示として実行され、即座に異常動作へ発展する可能性があります。加工は座標・送り量・回転数などの数値で進行し、機械側に判断・補正機能はありません。

人がその場で微調整を行う手動旋盤と異なり、一度プログラムが開始されると作動が継続されるため、異常に気付いた段階では工具破損、ワーク損傷、治具脱落、さらには作業者への接触事故が既に発生している可能性があります。こうした特性から、入力作業は単に操作との認識ではなく「安全と品質を守る工程」と捉える必要があります

入力者の注意力に依存する運用では限界があり、複数人確認と変更履歴の管理を前提とした運用設計が必要です。教育も「正しい入力方法」だけでは不十分で、誤入力時にどのような挙動・停止タイミングになるのかを理解させる訓練が効果的です。加えて、チェック内容は紙や経験に頼らず、デジタルチェックリストとして標準化することで思い込みリスクを防げます。

つまり、NC旋盤の安全は「誤入力ゼロ」を目指すのではなく、「誤入力が起きても事故に繋がらない設計」を実装することが大切です。

異常検知の見落としと反応の遅れ

異常検知が遅れると、工具やワークの破損、飛散、摩擦熱による火傷だけでなく、設備の損傷にまで発展しかねませんそのため、異常を「気づいたら止める」という感覚任せではなく、「何を異常と判断し、どの時点で停止するか」を明文化し、全員が同じ基準で判断できる教育が必要です。

NC旋盤は自動運転により観察時間が少なく、装置が自動補正されにくい傾向があるため、異常兆候を見逃すと破損や飛散へ一気に進行する危険があります。特に異音、振動、切粉色の変化、匂い、負荷変動などの兆候に注意する習慣が不足している現場では、発見時にはすでに危険域に達している可能性があります。

解決には経験や勘ではなく、五感で捉えられる兆候と温度・振動・電流値などの数値基準を組み合わせ、観察ルールを体系化することが必要です。五感と数値の組み合わせによって、検知、停止判断、報告フローが標準化され、属人的な判断に依存しない安全運用を実現できます。

旋盤による事故を防ぐための3つの安全原則

旋盤はわずかな操作ミスが重大事故に繋がる機械である一方、「具体的にどのような対策で事故を防げばいいのか?」と疑問に思っている方はいらっしゃるはず。

そこで以下の3原則にもとづき、具体的な事故防止策を解説します。

標準化|誰が作業しても同じ安全水準を保つ

旋盤作業の安全を確保には、作業手順の統一と標準化が欠かせません。これは、作業者の「慣れ」や「自己流の解釈」といった属人的な要素を排除し、安全な手順を「仕組み」として定着させることが目的です。この課題は旋盤作業に特有のものではなく、安全と品質を担保すべき全ての製造現場に共通しています。

その有効な解決策として、動画マニュアルの活用が進んでいます。例えば化学メーカーである児玉化学工業株式会社は下記の「ボルトを入れホットメルトでとめる作業」のように、手順を視覚化した教材を活用することで作業者ごとの理解差をなくし、標準化に成功しました。

▼動画マニュアルによる標準化の例▼

もし各作業者が「自分の経験ベース」で手順を変えてしまえば、確認漏れや固定不足、設定値の誤りなど、小さな差が重大事故へ繋がります。

旋盤作業では始業点検・工具固定・チャック操作・切削条件・加工物固定確認までのすべてが安全と品質につながります。こうした基準を文書だけではなく、動画や写真、チェックリストを活用して教育することで、知識の浅い新人の派遣社員や言語の壁のある外国人労働者が担当しても同じ作業フローで再現できる状態に近づけられ、標準化が可能です。

※本動画は、製造業の現場教育に特化した動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」で作成されています。tebikiのサービス詳細や導入事例についてはサービス資料をご覧ください。

>>>かんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育サービス資料」を見てみる

技術伝承|暗黙知化したノウハウを共有し、均一な教育を実現する

ベテラン作業者の経験に頼った教育だけでは安全ノウハウが属人化しやすく、指導内容が作業者ごとに異なるリスクがあります。特に、感覚的な判断や過去の経験則に基づく指導だけでは若手や経験の浅い作業者に正しく伝わらず、誤った解釈が事故につながる可能性があります。

そこで、経験依存の教育から脱却し、動画教材や音声付きのマニュアルを活用し、誰が教えても同じ内容になる教育体系を整えることが重要です。視覚・聴覚情報を用いた教材は技能理解の再現性を高め、マニュアルの読み違いや指導者ごとの教え方の違いをなくせます。さらに、習得状況の確認や再視聴が可能となり、OJTで生じる「教えた/教わっていない問題」も解消できます。

例えば明和工業株式会社では作業場にディスプレイを設置し、QRコードで即座に動画マニュアルを呼び出せる仕組みを設けており、誰でも迷わず標準作業を実行できる環境が整えられています。

作業場にディスプレイを設置し、QRコードで即座に動画マニュアルを呼び出せる仕組みを表す写真

※同社が活用している動画マニュアル作成ツールの詳細はこちら

可視化|危険とヒヤリハットを見える状態にする

「危険箇所をメモした」「ヒヤリハットを記録した」だけでは、安全意識の向上や行動変容にはつながりません。特に旋盤作業のように高速回転や飛散物といった危険がその瞬間しか見えない作業では、文字や口頭説明だけでは危機感を共有しきれないという課題があります。

そこで効果的なのが、危険を視覚的に理解できる形で可視化する仕組みです。写真や動画で危険動作の一瞬を切り取ったり、ヒヤリハットの「再現映像」を制作することで、抽象的な説明が具体的な危険認知に変わります。「言われたことを守る」ではなく「自分ごととして危険を理解する」状態を作れる点が最大のメリットです。

例えば、過去の不安全行動を動画でリアルに再現するだけでも「危なかったらしい」 を 「自分も同じ条件でやっていたかもしれない」と認識が変化し、行動基準そのものを見直すきっかけになります。

▼危険行動を再現し、原因と防止策を視覚化した教育動画サンプル▼

こうした安全意識を根付かせるための1つの指針として「動画KYT」が挙げられますが、詳しくは以下の資料で解説しているので、あわせて参考にしてみてください。

関連資料:労災ゼロ!形骸化したKYTから脱却する動画KYTとは

動画によるマニュアル整備・標準化を通じて安全な現場作りを実現した事例

動画マニュアルの整備によって標準化を実現し、事故を未然に防止している企業は複数あります。ここでは以下の2社の事例を紹介します。

  • 動画で全拠点の安全品質意識を統一*5
  • 教育コストと業務負荷を減らした改善例*6

旋盤は作業員の安全意識や現場の標準化が労災防止に大きく影響するので、紹介する企業の取り組みは参考になるはずです。

その他の事例についても詳しく参照されたい方は、以下のリンクから別紙の資料をご覧ください。

>>「動画マニュアルを活用した安全教育・対策事例(pdf)」を見てみる

動画で全拠点の安全品質意識を統一

株式会社ロジパルエクスプレスは倉庫オペレーションから輸送まで一貫した物流サービスを担う企業です。

課題tebiki現場教育導入後の効果
・拠点ごとでマニュアル内容が異なり作業品質が統一されない
・紙中心で情報検索に時間がかかる
・ベテランの暗黙知が属人化し継承できない
・多様な雇用形態で教育レベルの差が生じる
・動画化による視覚的理解と作業基準の統一
・PC/スマホ即時閲覧で情報確認スピード向上
・ノウハウの動画蓄積で経験知を資産化
・全社配信により教育レベルを均一化

同社は全国複数拠点の物流現場で約300名が従事しており、正社員だけでなくパートナー社員や派遣スタッフも多いため、拠点間で作業品質と教育水準を揃えることが重要課題となっていました。

しかし実際には、紙マニュアルが各拠点で独自に運用されていたことで手順や判断基準が統一されず、品質差・情報検索の効率低下・ノウハウ属人化といった問題が顕在化していました。さらに、ベテランの暗黙知が可視化されず退職時に失われるリスクも抱えることに。

そこで同社は動画マニュアル「tebiki現場教育」を導入し、作業手順を映像化したことで理解負荷を軽減。伝達ミス防止や承認スピードの向上、情報検索性の改善を実現しました。

また、事故防止月間には全社へ安全動画を配信し、拠点間の教育水準を均一化。PC・スマホですぐに閲覧できるため利用率が自然に向上し、安全意識の定着に寄与しました。現在は現場に留まらず、全社的な業務改革ツールとしての活用が進んでいます。

同社が導入した動画マニュアルの詳細については、以下の事例で詳しく紹介しています。

>>同社が扱う動画マニュアル「tebiki現場教育」の紹介ページはこちら

教育コストと業務負荷を減らした改善例

株式会社フジトランス コーポレーションは、港湾運送・倉庫事業・海上輸送・梱包事業など多様な物流サービスを展開する総合物流企業であり、国内外で1,000名以上の従業員を抱える大規模組織です。

課題tebiki現場教育導入後の効果
・多国籍スタッフにより教育理解度に差が生まれる
・対面・電話説明が中心で教育工数が膨らむ
・紙・PDFマニュアルが理解しづらく検索性も低い
・引き継ぎや問い合わせ対応が属人化
・言語ギャップにより教育効率が低下
・作業手順や教育内容を動画化し標準化
・視覚的理解で外国人スタッフも短期習得
・多言語翻訳により教育負担を軽減
・問い合わせ対応は「動画参照」に変更し月10時間→3時間へ削減
・だれでも同一品質で習得できる教育体系を構築

多国籍人材が増える中で、作業引き継ぎや教育レベル、理解度に差が生じやすい課題があり、現場教育・マニュアル作成・問い合わせ対応など、人依存業務が多いことから「働き方改革と品質維持の両立」が重要テーマとなっていました。

課題の背景には、対面説明中心の教育、紙・PDFマニュアルの理解しづらさ、引き継ぎ・問い合わせ工数の増加、言語ギャップが挙げられます。そこで同社は動画マニュアル「tebiki現場教育」を導入し、作業手順・安全教育・システム操作まで動画化することで、指導内容の標準化と教育品質の均一化を実現しました。

動画により視覚的理解が容易になり、外国人スタッフも短期間で習得可能となったほか、多言語対応によって教育効率が向上。問い合わせ対応も動画参照に切り替え、月10時間かかっていた対応が3時間まで削減されるなど、業務負荷低減に大きく寄与しました。同社は動画教材により教育体系を統一し、誰でも同レベルで習得できる環境を構築しています。

同社が導入した動画マニュアルの詳細については、以下の事例で詳しく紹介しています。

>>同社が扱う動画マニュアル「tebiki現場教育」の紹介ページはこちら

結論|旋盤事故は「個人の注意」ではなく「仕組み」で防ぐ

旋盤作業における安全確保は、作業者の注意力や経験値に依存する限り、必ずヒューマンエラーが残り続けます。つまり「安全=意識の問題」ではなく、本質的には「安全=仕組みの設計」の問題です。防護装置・作業手順・教育体系・危険情報共有などを個人判断に頼らず、誰でも同じ行動が再現できる状態へ整えることが事故ゼロにつながります。

そのためには、作業を統一する標準化、経験知を形式知化する技術伝承、危険を認知できる状態にする可視化の3原則が必要です。注意喚起や声掛けを繰り返すだけの安全対策から脱して、「再現性のある安全」を構築してみましょう。

引用元/参照元

*1:厚生労働省 職場あんぜんサイト「NC正面旋盤の数値入力ミスにより、切削工具が加工物に衝突し、加工物が外れ飛散」
*2:厚生労働省 職場あんぜんサイト「修理中の機械に触れて感電」
*3:厚生労働省 職場あんぜんサイト「CNC施盤に巻き込まれて死亡」
*4:厚生労働省 職場あんぜんサイト「樹脂製品を旋盤加工中にはさまれて死亡」
*5:tebiki現場教育「動画で全拠点の安全品質意識の向上と業務ノウハウの可視化を達成」

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