かんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki」を展開する現場改善ラボ編集部です。製造業や物流業などで活躍するベルトコンベアは、効率的な搬送に欠かせない設備です。しかし、一度事故が起きると重大な労働災害につながる危険性をはらんでいます。稼働を止めずに対応しようとする心理が、大きな事故を引き起こす原因になります。
そこで本記事では、事故の種類や具体的な事例、具体的な安全対策について解説します。
なお、事故を防止するためには設備面での安全対策はもちろん、運用面での対策も欠かせません。特に、昨今では伝えられる情報量の多さから、動画マニュアルの整備が浸透しています。動画マニュアルを活用した事例は、「 動画マニュアルを活用した安全教育・対策事例(pdf)」をご覧ください。
目次
ベルトコンベア事故の種類と原因
ベルトコンベアで発生しやすい事故は、おもに下記の5つに分けられます。
- 巻き込まれ事故
- 挟まれ・切断事故
- 転倒・落下事故
- 感電事故
- 衝突・飛来落下事故
これらの事故は、単なる不注意だけでなく、設備の欠陥や管理体制の不備が重なって発生します。現場に潜む危険性を再認識し、根本的な原因を洗い出すことが重要です。
巻き込まれ事故
ローラーとベルトの間に手や衣服が引き込まれるのが、巻き込まれ事故です。ベルトコンベアでは強い力で物を引き込むため、一度触れると瞬時に奥まで巻き込まれてしまいます。
事故の原因として多いのが、機械を止めずに清掃や異物除去を行おうとすることです。「普段からやっているから大丈夫」という思い込みが、大きな事故を招きます。
たとえば、サイズの合わない作業服のたるみやボタンの留まっていない袖口は巻き込まれる原因のひとつです。また、手袋や軍手は繊維がローラーに絡みつきやすく、手を引き抜くことができなくなるため危険です。
巻き込まれ事故を防ぐためには、服装を整え、手袋のような巻き込みの恐れのあるアイテムの着用は避け、作業時は必ず機械を止めましょう。
挟まれ・切断事故
可動部分に指や手足が挟まれる事故も多いです。ベルトコンベアの可動部はもちろん、ベルトコンベア自体が可動する場合にも不注意で挟まれるケースがあります。
万が一巻き込まれた場合、指や腕などに深刻なダメージを負う恐れがあります。通常稼働中に挟まれることがないように、対策を立てなければなりません。また、巻き込まれ事故同様にメンテナンス時は、必ず機械を止めましょう。
転倒・落下事故
ベルトコンベア周辺の作業環境が原因で、転倒や落下事故が起こることもあります。歩く場所の安全性が確保されていないと、思わぬ怪我につながります。
また、搬送物がベルトコンベアから落下し、作業者が転倒するケースもあります。転倒した際にベルトコンベアの稼働部に手をついてしまい、二次災害を引き起こすケースも少なくありません。
さらに、高所に設置されたベルトコンベアの点検通路や足場からの落下にも注意が必要です。作業スペースが狭かったり、5Sが徹底されていなかったりすると、足元がおろそかになり事故の危険性が高まります。常に作業環境を意識することが、事故防止に欠かせません。
感電事故
モーターや配線の異常による感電も、重大な事故のひとつです。長期間の使用による劣化で配線の被覆が破れると、漏電の危険性があります。また、電源を切らずに作業して感電するケースもあります。
特に、水を使う現場のベルトコンベアでは感電のリスクが高まるため、より注意しなければなりません。濡れた手で操作盤に触れてしまい、強い電流を浴びる事故も発生しています。
導入時の施工不良によるアースの未接続や、定期的な点検を怠ることも原因です。感電はそれ自体が命に関わるだけでなく、ショックで高所から落ちたり機械に巻き込まれたりする要因にもなるため、電気系統の適切な管理が重要です。
衝突・飛来落下事故
ベルトコンベアの衝突事故とは、多くが搬送物とほかの機械、人と接触する事故です。
たとえば、ベルトコンベアで運ばれている荷物が人にぶつかるケースがあります。重い荷物が落下して作業者にぶつかると、骨折しかねません。
また、ベルトコンベア周辺はフォークリフトなどの運搬車両が行き交うため、接触事故も発生しやすい場所です。歩行者と車両の通路がしっかりと分けられていないと、死角から出てきた車両とぶつかるリスクが高まります。
さらに、ベルトコンベアで搬送物が滞留した場合、荷物が衝突して落ちてくることもあります。ベルトコンベアの速度が速く、荷物が重いほど被害は大きくなるため、荷崩れ対策も欠かせません。
ベルトコンベアによる事故事例2つ
実際の労働災害事例を知ることで、現場に潜む具体的な危険性が明確になります。ここでは2つの事故事例を紹介します。
- 非常停止スイッチを押せずに挟まれた事例
- 安全対策が不十分で巻き込まれた事例
順番に見ていきましょう。
非常停止スイッチを押せずに挟まれた事例
1つ目は、ベルトコンベアのガイドローラーに腕を巻き込まれ、重傷を負った事例です。この事故は、製品の位置を直そうと、機械を止めずに手を出したことが原因で起こりました。
※出典元:https://jashcon-tokyo.com/150812tsa-28saigai.pdf
「これくらいならすぐに直せる」という過信と「停止ボタンが遠くにあって面倒」という油断が、取り返しのつかない結果を招いています。さらに問題だったのは、非常停止スイッチが作業者の手の届かない場所にあったことです。
法令では、どこからでもすぐに止められる装置の設置が義務付けられています。しかし、この現場ではそれが機能しておらず、巻き込まれた本人が自力で機械を停止できませんでした。本事例のような事故を引き起こさないためにも、いついかなるときでもベルトコンベアを停止できるように設計しなければなりません。
安全対策が不十分で巻き込まれた事例
2つ目は、クリーニング作業中に作業者がベルトコンベアの間に挟まれ死亡した事例です。搬送物が落下していることに気づいた作業者は、これを拾おうとしたところ、昇降式ベルトコンベアが降下してきて2つのベルトコンベアに挟まれました。
発生原因のひとつは、不十分な安全対策です。昇降式ベルトコンベアが稼働するときは警報音が鳴るようになっていましたが、周囲の騒音で聞き取りづらかったといいます。また、柵を設けていたものの、鍵もかかっておらずいつでも容易に立ち入りができました。
さらに、ルールが不明確だった点も事故発生の原因と考えられます。搬送物の落下は以前からありましたが、これに対応する手順書は作成されていませんでした。そのため、作業者が自分の判断で作業していたのです。
安全な作業を定着させるには、正しい手順を誰もが理解できるよう、マニュアルの作成が必須です。その際は、テキストのマニュアルだけではなく、視覚的に伝えられる動画マニュアルの作成などが効果的です。
ベルトコンベアの安全対策が求められる4つの作業シーン
ベルトコンベアの安全対策が求められる作業シーンは、下記のとおりです。
- 清掃・保守・点検作業
- 搬送物の異物除去作業
- 荷積み作業
- 設備の調整作業
ベルトコンベアの事故は、通常稼働しているときよりも、トラブル対応やメンテナンスといった非定常作業時に多く発生します。順番に見ていきましょう。
清掃・保守・点検作業
ベルトコンベア周辺の清掃や部品の点検などは必要な業務です。しかし、電源を入れたまま作業し、怪我をするケースがあとを絶ちません。
奥まった部分を点検する際は、無理な姿勢をとることでバランスを崩し、稼働部に触れてしまう危険があります。また、複数人で作業する場合のコミュニケーション不足も事故の原因です。
たとえば、一人がまだ点検しているのに、別の作業者が確認せずに機械を動かしてしまうと重大な事故につながります。点検時は必ず電源を切り、お互いの声掛けや合図の確認を徹底しなければなりません。
搬送物の異物除去作業
流れてくる製品の詰まりを直したり異物を取り除いたりする作業も、安全対策が必要な場面です。
詰まりが直った瞬間に、ベルトコンベアが急に動き出すリスクがあります。また、専用の道具を使わずに素手や軍手で作業していると、手が引き込まれる可能性が高いです。
少しの手間を惜しむことが、大事故につながりかねません。異物を除去する際は必ず機械を停止し、適切な道具を使用して作業しましょう。
荷積み作業
ベルトコンベアに荷物を載せる作業も、安全対策を徹底しましょう。決められた重量を超える荷物を載せると、機械に負担がかかり故障や荷崩れの原因になります。
不安定な置き方をすると、搬送中のわずかな振動で荷物が落ちてしまいます。また、作業のペースがベルトコンベアの速度と合っていないと、焦りによって無理な作業をしかねません。
たとえば、ベルトコンベアの速度に追いつこうとして無理な姿勢で荷物を載せたり落ちかけた荷物を慌てて拾おうとしたりすると、転倒や巻き込まれ事故につながります。このような事故を防ぐためには、適切な重量と速度を守ることが重要です。
設備の調整作業
ベルトのズレを直す作業は、ベルトコンベアの整備・点検に関する専門知識が必要です。正しい知識を持たない人が安易に調整すると、重大な事故を引き起こしかねません。そのため、調整作業は必ず正規の担当者が行い、一般の作業者には行わせない管理体制が重要です。
また、正規の担当者でも、経験や勘に頼って整備をしていては意味がありません。「今まではこうだったから」と、手順書やマニュアルを確認せずに調整すると、予期せぬ挙動を起こして事故につながる可能性があります。
【設備面】ベルトコンベア事故を防止する3つの安全対策
ベルトコンベアの事故を防止するためには、設備面の安全対策を徹底する必要があります。具体的な3つの対策は、下記のとおりです。
- 回転部分を覆う安全カバーやガードを設置
- 非常停止装置の適切な位置と動作確認
- 搬送物の落下防止・逸走防止対策
物理的な対策を施すことで、ヒューマンエラーの発生を防止できます。もっとも確実な方法なので、最初に確認しましょう。
回転部分を覆う安全カバーやガードを設置
設備面における基本的な対策は、危険な部分に人が触れられないようにすることです。可動部分は、丈夫な安全カバーやガードでしっかりと覆いましょう。
法令でも、危険を及ぼす恐れがある部分にはカバーの設置が義務付けられています。さらに安全性を高めるために、インターロック機構の導入がおすすめです。
インターロック機構は、カバーが外れている状態では機械が動かないようにする仕組みです。インターロック機構があれば、メンテナンス後にカバーを戻し忘れても、機械が作動しないため事故を未然に防げます。
非常停止装置の適切な位置と動作確認
万が一の事態が起きたとき、被害を最小限に抑えるのが非常停止装置です。非常停止ボタンは、作業者がどこからでもすぐに押せる位置になければ意味がありません。
長いベルトコンベアの場合は、操作盤だけでなく、ベルトコンベアに沿ってどこからでも止められるひも状のスイッチを設置しましょう。また、迷わず押せるように、目立つ色や標識で示しておくことが重要です。
非常停止ボタンは設置して終わりではなく、確実に機械が止まるかを定期的に確認しましょう。配線が切れていたり、ボタンが固まったりしていないかを確認し、常に使用できる状態を保つことが重要です。
搬送物の落下防止・逸走防止対策
搬送物の落下やベルトコンベアの逸走を防ぐ対策も、事故を防ぐために重要です。ベルトコンベアの側面には、搬送物が落下しないように、十分な高さのカバーを取り付けます。
また、高所にあるベルトコンベアの下には落下防止ネットを設置し、下を通る作業者の安全を確保しましょう。傾斜のある場所では、逸走を防止するためにベルトコンベアをしっかり固定するのがおすすめです。逸走とは、傾斜部分で荷物の重みによりベルトが逆走したり、予期せぬ速度で動き出したりする現象を指します。
周囲の安全対策を万全にし、作業者を守りましょう。
【運用面】ベルトコンベア事故を防止する6つの安全対策
設備面だけでなく、運用面の対策も同時に行う必要があります。作業者の意識を高め、安全な環境を作るための方法を6つ解説します。
- LOTO(ロックアウト・タグアウト)の徹底
- 定期的な設備点検の実施
- 危険箇所への注意標識設置
- 作業者への安全教育
- 危険予知・5S・ヒヤリハット活動の実施
- マニュアルの整備
たとえば、非常停止ボタンを設置しても、普段の点検を怠りいざというときに動作しなければ意味がありません。設備面と運用面で安全対策を施すことが、無事故の現場を作り出すのです。
LOTO(ロックアウト・タグアウト)の徹底
メンテナンスなどの際に必ず行うべきルールが、LOTO(ロックアウト・タグアウト)の徹底です。
ロックアウトとは、作業前に電源を切ることです。電源を切ることで安全に作業できますが、まだ作業中にもかかわらずほかの作業者が電源を入れると、事故につながる恐れがあります。それを防止するためには、ロックアウトを行った場所に警告タグを取り付けるのがおすすめです。これをタグアウトといいます。
また、警告タグにはロックアウトをした作業者がわかるように表示する場合もあり、どうしても電源を再稼働したい場合は「誰に問い合わせるべきか」すぐわかるようになっています。
LOTOは、自分の命を守るための絶対的なルールとして、全員に理解させることが重要です。また、ルールが形骸化しないよう、定期的に正しく運用されているか確認しましょう。
定期的な設備点検の実施
機械の劣化や異常を事故の前に見つけるため、定期的な点検が欠かせません。定期点検は項目ごとに頻度を定めましょう。
たとえば、毎日の始業前点検では、非常停止ボタンの動作やカバーに異常がないかを目で見て確認します。
さらに、月ごとや年ごとの点検ではベルトの摩耗具合やローラーの回転不良、異音などを詳しく調べます。点検結果はただ確認するだけでなく、記録として残し、故障の前に部品を交換するなどの予防に役立てることが重要です。
重大な問題が見つかった場合は、生産を遅らせてでもすぐに機械を止めて修理しなければなりません。そのため、速やかに修理できる体制を整えましょう。
危険箇所への注意標識設置
危険な場所には、視覚的に警告する標識を設置します。「巻き込まれ注意」や「立入禁止」といった分かりやすいマークを使い、誰もが注意できるようにしましょう。
ただし、人間は毎日同じ標識を見ていると慣れてしまい、注意を払わなくなる傾向があります。そのため、標識が汚れたり色あせたりしたらすぐに交換し、常に目立つ状態にしておかなければなりません。
見えやすい警告表示を保つことで、無意識の危険な行動を防ぐことにつながります。
作業者への安全教育
機械の危険性を正しく理解させるための安全教育は欠かせません。新しく入った従業員には、ベルトコンベアがどのような危険性を持っているか、しっかりと伝えましょう。
また、単にルールを守れと言うだけでなく、過去の事故事例を交えて「なぜそのルールがあるのか」を論理的に説明することも重要です。ベテラン作業者に対しても定期的に講習を行い、慣れによる危険な行動を修正します。
経験に合わせた教育を継続して行うことで、現場全体の安全に対する意識を高い状態に維持します。
危険予知・5S・ヒヤリハット活動の実施
日常業務のなかで、危険予知(KY)や5S、ヒヤリハットなど安全に対する取り組みを実施することが重要です。
たとえば、危険予知は日々の業務を通じて危険を予測する力を身につけます。作業を始める前に、どのような危険があるかをチームで話し合う危険予知トレーニング(KYT)が有効です。
関連記事:KY活動(危険予知活動)の進め方は?記入例文やネタ切れ対策を紹介【エクセルシート付】
また、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの「5S」を徹底することで、床の上の障害物や油汚れなどによる転倒事故を防ぎます。
関連資料:生産性を高める5S活動 正しい運用に欠かせない「重要なS」とは
さらに、事故にはならなかったがヒヤリ・ハットした経験を集め、共有しましょう。1件の重大事故のうちには、29件の軽傷事故と300件のヒヤリハットが潜んでいると言われています。ヒヤリハットを一つひとつ対策することで、重大事故が防げるのです。このような地道な活動が事故を防ぎ、安全な職場を作ります。
関連記事:ヒヤリハットとは?報告書の例文・書き方や対策方法、語源について
マニュアルの整備
すべての作業の基本となるマニュアルを作成しましょう。トラブル時の対応や、電源を切る手順などを文書化し、自己流の危険な作業をなくします。
手順書は一度作って終わりではなく、機械が変わったり新しい事例が出たりした際には、常に最新の情報に更新しましょう。最近では、正しい動きを視覚的に伝えられる動画マニュアルを導入する企業も増えています。
動画マニュアルは、文字だけでは伝わりにくい細かい動作ややってはいけない行動を映像で見せられるため、教育の効果が大きく上がります。素早く効果的に要点を伝えられるため、文書化されたマニュアルがある場合でも、動画マニュアルを追加で用意するのがおすすめです。
関連資料:~製造業・物流業の事例から学ぶ~動画マニュアルを使った安全教育の取り組みと成果
まとめ|設備面・運用面から事故原因を知ることが重要
ベルトコンベアは便利な設備ですが、わずかな油断が重大な事故を引き起こします。巻き込まれや挟まれなどの事故を防ぐためには、事故の根本的な原因を知り、現場の危険性を正しく把握することが重要です。
具体的には、安全カバーや非常停止装置などの「設備面」と、作業手順の徹底や教育など「運用面」のルールを定着させる必要があります。経営層と現場が一体となって安全な環境づくりに取り組み、従業員が安全に働ける職場を目指しましょう。








